個人の税金

確定申告による医療費控除【年収パターン別で解説します】

2020年1月27日

確定申告って何?
年末調整と何が違うの?

こんな疑問を持っている方も多いのかもしれません。

両方とも、ざっくりいうと、税金の精算をする行為なんです。
なので、会社でやってもらう年末調整で精算が済む方もいれば、確定申告しないといけない方もいます。

今回解説する、医療費控除については、年末調整では精算できないので、医療費控除を受けたい方は、確定申告をしなければ還付を受けることができません。
医療費控除は、還付を受けることができる規定なので、「面倒くさいから受けない」を選択することもできます。

さて、医療費控除をすれば、税金の還付が受けられることが分かっていても、こんな疑問を感じた事はないでしょうか。

 

ポイント

そもそも対象となる医療費ってどんなもの?

自分の分だけ?家族の分は含めて良いの?

医療費が10万円を超えていないと意味がないって聞いたけど?

還付ってどのようにされるの?

例えば、昨年出産があったんですが、税金は返ってきますか?

 

このあたりの疑問の解決と、具体的に、年収いくらでどれだけ税金が返ってくるか試算してみますので、読み進めていただければ、医療費控除の内容を理解できて、確定申告したくなると思います!

やらないと損です。

 

確定申告による医療費控除

難しい制度の説明をするつもりはありません。
簡単に言うと、自分自身や生計を一にする親族の医療費は、確定申告において、医療費控除できます。

ただし、支払った医療費を補填されるために受取った保険金などがある場合は、差し引かなければなりません。

生計を一にする親族については、後述するとして、確定申告において、医療費控除できるというのは、言い換えると、その支払った医療費を経費として認めるということです。
なので、支払った医療費がそのまま還付されるのではなく、医療費が経費となるので、「医療費×税率」分、税金が還付されるということです。

 

そもそも対象となる医療費ってどんなもの?

例を挙げればキリがないので、一言で言うと、病気の治療や診療のために支払った医療費が対象になります。

「そんなん分かってるわ」って話になるので、医療費にならないものの基準はこんな感じです。

 

医療費控除の対象にならないもの

容姿、美容のため支払った費用

健康維持のためや、病気予防のために支払った費用(医療費控除を受けない代わりに控除できる制度があります。)

健康診断費用など(健康診断後、病気が発覚し、治療を受けた場合はOK)

日常生活で必要な、眼鏡、コンタクトレンズ、松葉づえ、補聴器などの購入費用(これらがないと医師の診療などが受けられない、どうしても必要な場合はOK)

 

逆に、「え、こんなものも対象になるの?」ってものもあります。

 

医療費控除できるもの

通常必要なものに限り、公共交通機関などの通院費用(公共交通機関など利用できなくて、やむなくタクシーを使った場合もOK)

医師の証明書など一定要件はありますが、温泉施設やスポーツジムなどの利用料金

子供の歯列矯正費用(発育を阻害しないためにおこなうものはOK、就職や結婚など容姿にこだわっておこなうものはNG)

在宅療養の場合に、療養上の世話を受けるために支出した費用(医療関係者だけではなく、例えば、寝たきりの方の療養上の世話を家政婦に依頼した場合の費用もOK)

 

自分の分だけ?家族の分はどこまで含めて良いの?

生計を一にする親族の分は含めてOKです。

生計を一にするとは、日常の生活の資(財産など)を共にするという意味で、親族とは、6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいいます。

勘違いされる方も多いですが、この親族の範囲で、所得要件は関係ありませんので、夫婦共働きで扶養から外れている場合でも生計を一にする親族になります。

また、生計を一にという言葉から、別居している場合はダメだと思い込んでいる方もいらっしゃいますが、生活費など送金しているなどしているときは、生計を一にする親族になります。

 

医療費が10万円を超えていないと意味がないって聞いたけど?

我々の業界では、医療費控除が受けられる目安として、10万円超えているかどうか確認して、超えていなかったら控除が受けられない旨、説明するので、「10万円」が独り歩きしているんだと思います。

でも、場合によっては、医療費が10万円を超えていなくても医療費控除が受けられます。

10万円基準は、医療費控除の計算方法が影響していて、10万円か、総所得金額等(申告書Bでは第一表の⑨)の5%のどちらか少ない金額を超えた分だけしか医療費控除が受けられません。

10万円と比べられる総所得金額等について、他に収入がなく、給与だけを貰っている方に限定すると、給与所得控除という概算経費を引いた後の金額と思っていただいてOKです。

給与所得控除についてはこちら

また、給与所得控除について、詳しい内容を知りたい方は、こちらをご確認ください。

 

 

例えば、年収200万円の方で、支払った医療費が8万円だった場合でも、下記のように、19,000円の医療費控除が受けられます。

 

単純に医療費が10万円超えていないからといって諦めるのではなく、一旦、ご自身の収入を確認してみてください。

 

還付ってどのようにされるの?

上記、年収200万円の方で、支払った医療費が8万円だった場合、19,000円の医療費控除が受けられますが、19,000円が還付される訳ではありません。
この場合、約970円(19,000円の医療費控除×税率5%)が還付されることになります。

この970円は、確定申告書に受取口座を記入しますので、後日、そこに振込されます。

また、あくまで、還付ですので、前提として所得税を納付していない(税金がかかっていない)方は、医療費控除が受けられても、還付する税金がなければ意味がありません。

なので、源泉徴収票を確認して、源泉徴収税額に金額の記載があれば、還付される可能性ありで、金額がゼロとなっていれば、還付される財源がないので、還付はされません。

 

例えば、昨年出産があったんですが、税金は返ってきますか?

妊婦と診断されてからの定期検診や検査、通院費用は医療費控除の対象になります。
また、公共交通機関での通院が困難で、タクシーを利用した場合も医療費控除の対象になるので、忘れず、医療費控除を受けましょう。

また、公共交通機関の利用でも、領収書をもらっていないから受けられないと思っている方がいらっしゃいますが、手帳などに記録していればOKです。
領収書だけを集計するのではなく、このあたりも忘れず集計しましょう。

ただし、健康保険組合などから受ける、出産育児一時金などは医療費を補填する金額と考えられるので、支払った医療費から差し引かなければなりません。
気をつけたいのが、似たようなもので、産前産後の一定期間出勤できないことを理由に健康保険組合などから支給を受ける出産手当金というものがあります。
これは、医療費を補填するものとは考えないので、医療費から差し引く必要はありません。

なお、具体的にいくら税金が返ってくるかは、その方の収入と支払った医療費によります。

 

具体的にどれだけ税金が返ってくるの?

例えば、一旦、勤務先で年末調整が済んでいる方が、確定申告による医療費控除でどれだけ還付が受けられるのか試算してみます。

なお、前提条件は簡便的に納税者40歳で、3人家族(奥さんは専業主婦、子供は16歳未満)、社会保険料は大阪府の協会けんぽ加入とします。

 

年収500万円、医療費13万円パターン

確定申告をする前の年税額は、約100千円です。

確定申告で医療費控除を受けることによって、年税額が約98千円ぐらいになるので、差額の2千円の還付が受けられます。

 

年収600万円、医療費20万円パターン

確定申告をする前の年税額は、約165千円です。

確定申告で医療費控除を受けることによって、年税額が約155千円ぐらいになるので、差額の10千円の還付が受けられます。

 

年収700万円、医療費25万円パターン

確定申告をする前の年税額は、約234千円です。

確定申告で医療費控除を受けることによって、年税額が約219千円ぐらいになるので、差額の15千円の還付が受けられます。

 

まとめ

確認していただいたように、支払った医療費によって、また、収入が高い方ほど、税率も高くなるので、還付される税金も多くなります。

中には、「この程度か」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
領収書などをかき集めて、集計して、確定申告をする手間と、還付される金額を天秤にかけ、合うか合わないかで判断するのが良いでしょう。

合うか合わないかの簡易判断は下記のとおりです。

まず、ご自身の源泉徴収票の下記差額がいくらになっているのか確認してください。

 

 

その差額は、課税される所得金額なので、下記、国税庁HPで、税率を確認しましょう。

ざっくり、支払った医療費×その税率ぐらいが還付される金額なので、やるかやらないかの判断材料にできます。

税率はこちら

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