コロナ関連の情報ではありません。
もともと制度として用意されている配偶者控除のお話です。
お客様の確定申告や年末調整のときに、配偶者控除や配偶者特別控除などの所得控除を忘れている(適用できることが知られていない)ことが意外と多いんです。
具体的なパターンはこのようなかんじ。
こういった方々は収入の状況にもよりますが、ほとんどの場合、配偶者控除など適用できるでしょう。
忘れていた方もアウトではありません。
5年以内だったら、さかのぼって還付を受けることができるので、チェックしてみてください。
個人事業主でも、働いている奥さんの扶養に入れます
この記事の趣旨は、「フリーランスや個人事業主であっても、収入が少なかった年度は奥さん側で配偶者控除等が受けられる」です。
先ほどの「忘れやすいパターン」で例に挙げた1~3は、奥さんは働いていて収入があり、フリーランスや個人事業主であるご主人は、あまり収入が確保できなかったというパターンでした。
フリーランスや個人事業主の方は、コロナの影響も大きいはず。
どちらかというと不安定なフリーランスや個人事業主の方の場合、年度によっては奥さんと所得が逆転してしまうケースもあるのではないでしょうか。
そんなときは、配偶者控除も逆にできます。
また、個人事業主である旦那さんが、奥さん(青色事業専従者)に給料を払っていると、配偶者控除や配偶者特別控除は受けられません。
この場合、給与の支払額がどれだけ少なくても、奥さんを扶養に入れることは出来ません。
ですが、給与を受取っている奥さんが、自分に給料を払ってくれている個人事業主である旦那さんを扶養に入れて、配偶者控除を受けることまでは制限していません。
配偶者控除・配偶者特別控除が受けられる所得要件など
では、具体的にフリーランスや個人事業主の方がどれぐらいの収入であれば配偶者控除等の対象となるのでしょうか。
配偶者控除と配偶者特別控除それぞれの要件を確認していきます。
なお、平成30年分以後は、配偶者控除を受ける方(ここでは奥さん)の合計所得金額が1,000万円を超える場合、どちらも受けることができませんのでご注意ください。
合計所得金額とは?
ここでは簡単に説明したいので、奥さんは給与所得者という前提でお話します。
奥さんに給与以外の収入がなければ、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」が合計所得金額です。
他の所得があるという方や、合計所得金額が気になるという方は、こちらをご覧ください。
「合計所得金額」とは、純損失、雑損失、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失、特定居住用財産の譲渡損失、上場株式等に係る譲渡損失、特定投資株式に係る譲渡損失及び先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除を適用する前の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等の配当所得等(上場株式等に係る譲渡損失との損益通算後の金額)、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額、退職所得金額の合計額をいいます。国税庁ホームページ No.1170寡婦控除 より
配偶者控除
配偶者控除を受けることができる所得要件は、合計所得金額が48万円(令和元年までは38万円)以下でなければなりません。
フリーランスや個人事業主の方は、下記の計算結果が48万円以下かどうかチェックしてみてください。
ポイント
「収入-経費」って、利益ですよね。
青色申告特別控除額が65万円の方は、年間の利益が113万円以下であれば合計所得金額が48万円以下になるはずなので、配偶者控除の所得要件はクリアしています。
配偶者特別控除
配偶者控除の適用ができなかった方は、こちらをチェックしてみてください。
配偶者特別控除を受けることができる所得要件は、合計所得金額が48万円超133万円以下(令和元年までは38万円超123万円以下。ただし平成29年以前は38万円超76万円未満) フリーランスや個人事業主の方は、下記の計算結果が、この範囲内かどうかチェックしてみてください。
ポイント
ただ、注意が必要なのは、配偶者特別控除は合計所得金額に一定の幅が与えられていますよね。
この範囲の方を、すべて一律で所得控除してしまうと不公平が生じてしまうので、所得に応じて段階的に控除額が減っていきます。
たとえば、上記計算式で計算した結果、120万円になった場合、奥さんの合計所得金額が900万円以下だと、所得控除額は16万円になります。
控除額は減りますが、適用できるなら絶対にしておいた方が得です。
ちょっとでも配偶者控除の所得要件を超えてしまったら、即アウトと思っている方が多いですが、誤りです。
あまり知られていないですが、配偶者控除がムリでも、配偶者特別控除が適用できる可能性があるので、忘れずにチェックしてみてください。
具体的にどれぐらいの効果があるのか
年末調整に間に合わなかったら、確定申告すれば良い
フリーランスや個人事業主の方は、早くても年末ごろでないと収入や経費が確定しません。
一方、会社勤めの奥さんは、11月ごろに年末調整に関する資料を提出し、12月には調整計算を終える会社がほとんどだと思います。
理論的には再計算(年末調整のやり直し)はできますが、会社がひとりのためにそこまでの手間を良しとするのか疑問です。
その場合は、見積り計算でOKなので、配偶者控除か配偶者特別控除いずれかを適用したい旨、年末調整資料に反映させましょう。
もし、旦那の収入を会社に知られたくない、見積り計算が間違えていた、適用できないと思っていたけど配偶者特別控除なら適用できるという場合は、確定申告で対応しましょう。
5年さかのぼって還付を受けられる
いま、配偶者控除等を受けられると知った方、救済措置みたいなものはあるので、安心してください。
ある年度だけ忘れていても5年間さかのぼって還付申告を出すことができます。
具体的に、2019年の還付申告は2020年1月1日~2024年12月31日まで可能です。
逆にいうと、2020年12月31日までに還付申告ができるのは、2015年分です。
これまでの分をまとめて還付申告をしようとする場合は、2015年以後の分が対象です。
ただし、その間、ふるさと納税や医療費控除のために確定申告をしていた場合は、還付申告ではなく、更正の請求という手続きになるので、期限が若干異なり、当初の申告書の提出日から5年以内となります。
詳しくは、税務署に行けば教えてくれるので、相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
配偶者控除など扶養の対象は、「奥さんやご家族」だけではありません。
個人事業主であっても、経営者であっても、収入が落ち込んだときには、配偶者控除などの扶養の対象になることができます。
心当たりがあれば、確認してみてください。
結構な還付が期待できるので、調べてみる価値は大いにあると思います。