前回は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つの財務諸表のうち、貸借対照表の基本的な読み取り方を解説しましたが、今回は損益計算書についてです。
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3つの財務諸表の基本的な読み取り方(貸借対照表編)
財務諸表とは、会社法や金融商品取引法などにより作成が義務付けられている書類で、「貸借対照表」と「損益計算書」のほかに「キャッシュフロー計算書」の3つを「財務三表」といいます。 今回は、財務三表のなかで ...
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損益計算書とは、字面から何となく理解できると思いますが、その何となくのイメージで間違いないでしょう。
損益計算書は、一定期間の会社の収益と費用の状況を表したもので、英語では、「Profit and Loss Statement」といい、頭文字を取って、P/L(ピーエル)と呼ばれます。
前回、貸借対照表は決算期末や決算時点などの、「ある時点」でのストック状態であり、一定期間の損益を加えることで、次の決算に繫がり、それを繰り返すことで貸借対照表は創業時点からの積み重ねになると解説しました。

簡略化しましたが、下記の図のようなものが損益計算書です。

ちなみに前回の貸借対照表と上記の損益計算書はどこでつながるか説明しておきます。
例えば、売上があがると現金・預金か売掛金などの資産が必ず増え、逆に仕入では現金・預金が減るか買掛金が増えます。このように損益計算書に影響があると貸借対照表も連動して増減します。
お互いの財務諸表は常に連動しているので、イメージ図としては下記のようになります。

創業から初めての決算期で、利益のすべてを内部留保にすると、損益計算書の当期純利益300は、貸借対照表の利益剰余金に組み込まれます。
では、本題の損益計算書の基本的な読み取り方に話をすすめます。
損益計算書の基本的な2つの構造
損益計算書は、一定期間の会社の収益と費用の状況を表したものなので、その一定期間のあいだに会社がどのように儲けたか、または損したかを読み取ることができます。
一定期間とは通常は事業年度(一年)ですが、半期(6ヶ月)や四半期(3ヶ月)のものもあります。

また、損益計算書の構造で、2つの特徴があるので、図を見ながら確認してください。
一つは、収益から費用を差し引いて利益を計算するので、金額はすべて総額(グロス)で記載されます。
もう一つは、売上総利益、営業利益、経常利益・・・と、各利益にはそれぞれの意味があるので、会社の収益と費用をすべて合算して利益を計算するようなことはしません。
以下、各科目と利益の意味を解説していきます。
損益計算書の科目と利益の意味
本来、損益計算書には、上記図のような「科目の内容」は記載されていません。
今回は初めて損益計算書を見る方でも、おおよその内容が理解できるため記載しています。
売上総利益
会社の本業である営業活動から生じた売上は、損益計算書の一番上に記載されます。これは会社の事業規模を表すような指標になったり、金融機関からの資金調達にも影響を与えたりします。
その会社の本業から発生した売上から差し引く売上原価は、その売上を獲得するために直接的にかかった経費を意味します。
売上原価は業種によって様々で、製造業であれば原材料の仕入や製造に関わる人件費、加工賃、工場の維持管理費など製品の製造に関わる全てのものが記載されますし、人件費しかかからないサービス業では売上原価はゼロで、後述する販売費及び一般管理費に記載する場合もあります。
ここで計算された売上総利益とは、粗利(あらり)と呼ばれるもので、粗利益、おおざっぱな利益という意味です。
ホルモン焼き屋を例にすると、ホルモン焼きの売上からホルモンの材料費、鉄板や厨房設備の減価償却費などの売上原価を差し引いて、売上総利益を計算します。
販売費及び一般管理費
一般的に販管費と呼ばれるもので、会社の本業である営業活動から発生した経費で、売上原価以外のものをいいます。
例えば会社全体に関わる人件費や建物の家賃、水道光熱費、店舗の広告宣伝費、取引先との会議や接待での飲食費などが該当します。
特徴としては、売上に間接的にかかってくるものや、売上の増減に影響されず固定的にかかってくるものが記載されます。
営業利益
会社の本業での収益力を示すものです。
ここは、最終の当期純利益よりも大事なところといっても過言ではなく、営業赤字が数年続くと、「本業で食べていけていない」ことを意味します。
一年でも営業赤字になってしまうと、金融機関からの心証も良いものではありません。
また、営業利益は売上総利益と販管費によって計算されるため、売上総利益によってその会社の市場での優位性や独自性、販管費の増減で効率的な経営ができているかどうかを読み取れることができたりします。
経常利益
営業外収益とは会社の本業以外の活動で得られた収益をいいます。
具体的には、会社の預金口座から受け取る利息や、保有している不動産の賃貸収入のほか、本業で得た余剰の資金を株式などに運用させることで受け取る配当や株式売却益などが挙げられます。
営業外費用も同じように、会社の本業以外の活動でかかった経費をいいます。
具体的には、金融機関や社債の利息、株式などの運用による株式売却損などが挙げられます。
一般的には金融機関への支払利息が最も多く計上されます。
経常利益は、「けいつね」と呼ばれ、営業利益に営業外収益を加えて営業外費用を差し引いて計算することで、会社の経常的な収益力を示し、業績を見る上では最も重要な項目となります。
中小企業では、本業である営業利益で黒字を出していても、金融機関への利息を払うとたちまち赤字に転落してしまう会社も少なくありません。
その意味で、金融機関からすると、利息をカバーできるだけの収益力がどれぐらいあるかを確かめる指標として重要視されます。
税引前当期純利益と当期純利益
特別利益と特別損失は、会社の本業とは関係がなく、臨時的に発生したものが記載されます。
具体的には、保有していた不動産の売却損益や、災害や盗難による被害、役員の退職金などが挙げられます。
これらの損益は特徴としては、臨時的であるが故、高額になりがちなので、これまで見てきた項目に記載すると、会社の業績を誤って解釈されることもあるため、一番下の特別損益項目で差し引きすることになります。
経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引くことで、税金がかかる前の利益である、税引前当期純利益が計算されます。
法人税等には、法人税、事業税、住民税が含まれていますが、これは会社の利益に対して課税されるものです。
そして、最終的に税引前当期純利益から法人税等を差し引いて、当期純利益が計算されます。
これまで解説してきた損益計算書が示す利益のイメージはこんな感じです。
ちなみに最終的な当期純利益に、お金の支出の伴わない経費である減価償却費を加えたものが、金融機関への返済原資や、会社が投資にまわすことができる資金となります。
まとめ
損益計算書の基本的な読み取り方を解説してきました。
改めて、見やすさは置いといて、貸借対照表と損益計算書は、構造的に本当によくできた計算書だと思います。
また今回はまったく触れていませんが、貸借対照表と連動させて様々な財務分析がおこなえます。
発展的な財務分析をする前に、基本的な損益計算書の構造と読み取り方や各項目の意味を確認しておくと、より理解が深まることでしょう。