前回は商品や製品などの棚卸資産の販売についての収益の計上基準を紹介しましたが、今回は、請負の収益計上時期について解説していきます。
請負の収益計上時期は基本的には、完成引き渡し等の事業年度に収益計上することになりますが、「請負」という性質に応じて、下記の図のように4つの収益計上基準があり、一部強制適用されるものもあります。
一つ一つ確認していく前に、「請負」という概念を確認しておいてください。
ちなみに、上記図の「上記以外」が原則的な取り扱いとなりますので、便宜上、解説の順番が前後します。すみません!
請負ってなに?
民法632条で請負についての定義、633条で報酬の支払時期を規定しています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
民法632条
報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない。
民法633条および民法624条第一項
請負というのは、成果物などの「完成」が前提となっており、その完成後、終了後に報酬が支払われることから、基本的に法人税でも、収益計上時期については、引渡基準が採用されています。
請負の原則的な収益計上時期
請負の原則的な収益計上時期は、完成物などの引き渡しの日の属する事業年度に収益計上します。
後述しますが、上記、図のとおり、着工から完成まで一年以上要し、請負金額が10億円以上である長期大規模工事や、履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの、部分完成があると考えられるもの以外は、原則的な引渡基準により収益計上します。
また、委任や準委任契約などの成果に対する報酬についても、同様の取り扱いをします。(委任や契約内容が履行義務が一定の期間にわたり充足されるものである場合は、その事業年度に収益計上できます。)
部分完成があるもの
イメージとしては、一定の区域内でいくつかの建売販売住宅の建築を請け負った際、数戸すべての住宅が完成してからの引き渡しはしませんよね?
一般的には、完成した住宅から順次引渡ししていくことになることが多いと考えられます。
すべての建売住宅が完成し、引き渡しが完了したときに収益計上を認めると、工期によって収益計上時期が引き延ばされることになります。
それを防ぐため、部分完成の事実があると考えられるものについては、部分完成した事業年度に、その引き渡した量や、完成した部分に対応する工事代金の額を収益計上することになります。
履行義務が一定の期間にわたり充足されるもの
なんか、わかりにくい言い方ですよね。
簡単にいうと、請負側が仕事を進める過程で、相手方が少しづつ便益を受けたり、モノを使えたりしたときに収益計上をおこないます。
具体的にはコンサルティングサービスなどが該当し、時の経過に応じて収益計上することが適切だと考えられているようです。
ただし、これは認められる収益計上時期なので、強制ではありません。
いちいち時の経過に応じて収益計上なんてしていたら手間がかかって仕方ないので、ほとんどの場合が引渡し、完成事業年度に収益計上することになります。
長期大規模工事などの適用を受けるもの
ほとんどの中小企業では、取り扱うことがないと思いますが、着工から完成まで一年以上要し、請負金額が10億円以上である長期大規模工事については、工事進行基準が強制適用されています。
工事進行基準とは、工事の進捗状況に応じて工事代金を収益計上していきますが、工事の進捗状況は下記のように計算します。
工事進行割合
すでに支出した原材料費、労務費、経費の合計額 ÷ 工事原価の額
例えば、工期3年で20億円の工事(工事原価15億円、1年目6億円、2年目5億円、3年目4億円)を請け負った場合、それぞれの収益計上時期は下記のようになります。
1年目の収益計上額・・・20億円 × 6億円/15億円 = 8億円
2年目の収益計上額・・・20億円 × 11億円/15億円 - 8億円 = 6.6億円
3年目の収益計上額・・・20億円 - 8億円 - 6.6億円 = 5.4億円
まとめ
請負についての収益計上を確認しましたが、民法上は完成を約し、その結果に対して報酬が支払われることから、法人税法上も基本的には引渡基準、完成基準で収益計上をおこないます。
一部、部分完成など請負契約の単位に言及するようなものや、請負金額が大きく、工期が長くなる長期大規模工事については、なるべき早く収益計上をさせる規定があります。
同じ請負契約でも契約内容などにより、収益計上を遅くできる場合があるので、収益計上時期の見直しをしてみるのも良いかと思います。