銀行融資

銀行を意識した貸借対照表の作成

2019年11月12日

資金調達がスムーズにできる決算書は、資産や負債に透明性があり、かつ、利益を出して税金を納税している決算書なんです。

皆さん「そらそうやろな」、「わかっとるわ」となるでしょう。

でも、ほとんどの方は、利益と税金の有無などの損益(損益計算書)ばかりに目がいき、資産や負債(貸借対照表)には無頓着です。

貸借対照表は、下記のようなイメージで、左側に『資産一覧』、右上部に『負債一覧』、右下部は『資本』が記載されています。

 

 

今回は貸借対照表の読み方については解説はしませんが、実は、この借対照表は油断するとすぐに汚れます。

汚れるとは、見栄えが悪いということ。

どういった理由で汚れるのか。また、その汚れは金融機関がどう理解するのか解説していきます。

 

汚れた貸借対照表とは?

例えば、上記の貸借対照表、【流動資産】項目の一番下に「仮払金」があります。

科目の意味としては、決算時点ではお金は出ているが、いくらの経費になるのか、いくらの資産になるのかなど使途が明らかになっていないというものです。

この場合、15万円程度なら知れていますが、日常的に会社のお金を使う、また領収書の精算ができていないなど、ずさんな経理をしているとすぐに膨らんで、ブラックボックス的存在で貸借対照表に鎮座します。

ちゃんと管理ができている仮払金は何の問題もありませんが、ブラックボックス的な仮払金は税務署(税務上)および金融機関(財務上)いずれも経営者に対する給与と認定されます。

 

税務上の取り扱いについてはこちら。

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財務上は、役員報酬にプラスされます。

役員報酬がプラスされるということは、経費が増えますので利益が減ります。
利益が減ると返済資力が弱まるので、金融機関は、「貸せない」または「貸す金額を減らそう」となります。

 

内容不明な資産や負債が残っている!?

そんなことある?って思われるかもしれませんが、意外とあります。

原因は様々。経理担当者や経営者が会社の資産や負債をしっかり管理できていない、経理ミス、税理士のミスなどです。

例えば、これも上記貸借対照表の【投資その他の資産】項目の真ん中に、「差入保証金」がありますが、これは建物などの賃貸借契約の際、解約時に返還してもらうことを約してお金をはらったもの。

最近のことで憶えていたり、契約書が残っていれば問題ありませんが、多いのが、「かなり昔に解約したはずですが・・・」、「これはお父ちゃんの時代のものなので内容がよくわからない・・・」、「資料は税理士さんに渡していたので、ちゃんとしてくれてると思ってた・・・」などです。

過去の経理処理がわかり、解決できれば良いですが、できないこともあるでしょう。

その場合は、リスク覚悟でどうにかするしかありません笑


金額にもよりますが、触らぬ神に祟りなしで、残したままにしておいても税務上、財務上ともに大きな問題は起きないかもしれません。
しかし、こういったことは雑談なんかで、ぽろっと出てしまうもの。
「他にもあるのでは?」「いい加減な会社」といった印象をあたえてしまうことになるので、やはり、わかったときに何とかするべきでしょう。

 

魔が差して一度粉飾したが、なかなか正常化できない…

中小企業では、たまにあるんですよ。

棚卸資産を多く計上して利益を出して決算書の見栄えを良くして、金融機関からお金を借りやすくする行為。

この手の粉飾について、税務上は利益をわざと出して納税しているので問題とされません。しかし、財務上は別です。事実が明らかになれば金融機関は黙っていません。

金額が少ない場合は次回以降の融資が受けられない程度で済むかもしれませんが、金額によっては一括返済や損害賠償になります。
粉飾に軽い重いないと思いますが。

 

また、粉飾が厄介なのが一度手を染めてしまうとやめられなくなってしまうことです。
たまに大企業なんかがニュースになりますが、粉飾は常習化してしまい、それが普通になってしまうからなんです。

理屈はこうです。

 

step
1
二期目で金融機関からお金を借りたいので、棚卸資産を水増しして利益を計上しよう。

step
2
前期は粉飾したので、その棚卸資産は正常に戻そう。

あれ?大赤字になってしまった。
売上、経費は変わっていないのに金融機関にどう説明しよう・・・

仕方ない、最初に粉飾した棚卸資産をもう一回計上しよう。

step
3
そろそろ来期あたり金融機関からお金借りたいな。

また利益出さないとな・・・

step
4
粉飾第四期以降もぐるぐる二期、三期のサイクルを繰り返すことになり、粉飾が常習化してしまい、粉飾棚卸資産が普通に貸借対照表に記載され続けます。

 

まとめ

汚れた見栄えの悪い貸借対照表を解説しました。

損益計算書は事業年度ごとにゼロからスタートしますが、貸借対照表は創業時からの積み重ねです。読み込めば、その会社の歴史が紐解けます。

解説したように貸借対照表はちょっとしたことで、すぐに汚れ、汚れを落とすには税務上、財務上のリスクも伴います。

発覚したこと、やってしまった事をなしにすることはできませんが、区切りとして多少のリスクを受け入れつつ、心を入れ替えてキレイにすることはできます。

気になった方は、自社の貸借対照表の内容を細かくチェックしてみましょう。

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