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銀行へ借入残高表を提出することの意味【銀行がチェックしたい借入残高と、その読み方について】

2019年9月3日

銀行から借入残高表の提出を求められたり、他行の状況を聞かれたことはありませんか?

そのとき、次のようなことを思いませんでしたか?

 

借入残高表?借入残高の資料って?

なんで他行の借入状況も知りたいの?

そこからなにを読み取っているの?

提出して大丈夫?不利益をこうむることはない?

 

銀行が借入残高表の提出を求めたり、他行の状況を確認するのは、「このまま貸していて大丈夫か? 」、「新たな融資提案はできないか?」、「他行に後れを取っていないか?」ということを確認したいためです。
なので、借入残高表を提出する側としては、メリットにもなりデメリットにもなる可能性があります。

ほとんどの場合、借入残高表を提出することで、メリットがデメリットを上回ると考えられます。
しかし、考え方は人それぞれなので、今回の記事を読み進めていただいて、銀行から借入残高表の提出を求められたとき、ご自身でも判断できるようにしておいてください。

 

借入残高表とは?

銀行が最も欲しがる資料の一つである借入残高表について解説します。

借入残高表は月毎の借入残高の推移を記載したもので、任意で作成する資料です。

一部省略していますが、イメージではこんな感じでしょうか。

 

 

記載事項について、少しだけ確認しておきます。

 

記載事項

任意で作成する資料なので、記載内容や書式に定めはなく、自社でアレンジしてOKですが、主に、借入金融機関名、当初借入額と期首や期末時点での残高、返済期限、利率などを記載します。

毎月の返済額と残高も記載することで、どれだけのお金が返済で必要なのか確認ができ、残りどれだけ返済しないといけないかが一目でわかります。

どうせ作るなら自社でも確認しやすく、また、提出することがあるかもしれない銀行側にも伝わりやすいものにアレンジしてみてはいかがでしょうか。

銀行側にも伝わりやすくしなくても良いのでは?と思うかもしれませんが、後述する伝わりやすく作ることのメリットを確認したうえで、ご検討いただければと思います。

 

借入残高表を作らなくても銀行はここから情報収集している

借入残高表を作るのは面倒くさい!!

銀行にそんな資料提出せえへん!!

と言っても、銀行は、決算書に添付されている勘定科目内訳書のコピーを取るので、そこから情報収集をしているんです。

次のような感じのものです。決算書に付いているのを見たことないですか?

 

 

見覚えはないけど・・・

そういえば、銀行へ決算書のコピーを提出したとき、これが足りない、あれはないかと色々確認されたな、その中の一つの資料かなと思われる方が多いかもしれませんね。

結局のところ、借入残高表を作らなくても、銀行は情報を収集できているんです。

で、あれば、不利益をこうむらないように、誤解のない正確な情報を提供したくないですか?

ちなみに、勘定科目内訳明細書は、あくまで税務署への提出資料なので、基本的に必要最低限のことしか記載していません。

 

銀行は借入残高表から、なにを読み取っているの?

でも、本当に銀行に提出して大丈夫なんですか?

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すべての情報を提供するので、漠然とした不安はありますよね。

では、銀行が借入残高表からなにを読み取っているのか確認していきましょう。

 

銀行が借入残高表から読み取ること

  • 借入返済の比重を確認している
  • 他行の状況はどんな感じだろう
  • ないと思うけど、変な事してないかな・・・

 

このあたりは、ネガティブにもポジティブにも解釈できるので、会社にとっては、メリットにもなりますし、場合によってはデメリットにもなります。

 

借入返済の比重を確認している

まず、銀行は、決算書から返済能力を確認します。

返済能力が確認できるのは、簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)ですので、毎期の決算毎に変動し、良い時もあれば悪い時もあります。
良い時は問題ありませんが、悪い時は返済がしんどくなり、お金がどんどん減っていきます。

その毎期変動する返済能力から、返済割合を確認できるのが借入残高表です。

銀行は、会社の現時点の返済能力以上の借入はしていないか確認しているということです。
これはネガティブな解釈ですよね。

ポジティブに考えると、まだまだ返済能力に余裕がある場合、新たな融資の提案を銀行側から受けることがあります。
この場合、借りませんかと来ているわけですから、多少の融通や今までよりも有利な条件での融資というのも期待できるかもしれませんね。

ちなみに、銀行が確認する決算書のポイントが気になる方は、こちらをご確認ください。

 

銀行が確認する決算書の3つのポイント【銀行が決算書から読み取る返済能力とは?】

借入をする際、銀行に決算書を提出することがありますが、どこを見ているのか気になりますよね?   経営者の方と決算の打合せをしている時によく聞く言葉です。 経営者の方は黒字になっていれば良い決 ...

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他行の状況はどんな感じだろう

やはり銀行も他行の状況が気になります。

まずはネガティブバージョン。

例えば、銀行は去年まで借入残高表に記載されていた他行の残高がすべて完済されていると不安になるんです。なぜだか分かりますか?

他行は、この会社の「なにか」を掴んだのでは?危険な融資先なのか!?となるからなんです。
すべて完済しているというのは極端でしたが、仮に業績が悪くなったと判断された場合、他行の融資状況を確認して、他行に合わせて新たな融資の提案はしないなど、足並みを揃えられることも考えられます。

一方、ポジティブに考えると、「他行はどんどん融資を提案している」、「うちも後れを取ってはいられない」、「他行よりも有利な条件を提案しよう」となります。

要するに、ポジティブにもネガティブにもなるのは、会社の業績次第というところが大きいですが、たとえ業績が悪くても、情報を提供し、誤解されないよう説明することが重要です。

銀行は、決算書を数字でしか読み取っていません。その数字がどのような理由でそうなったのかということを知っておいてもらう、銀行が知りたいことは教えてあげる姿勢で対応すれば、必ず次につながるはずです。

 

ないと思うけど、変な事してないかな…

平たく言うと、融資を受けやすくする不正や、嘘の書類で騙されていないかなという確認ですね。

税務署へ提出した決算書とは別に、銀行用のものをつくる会社もゼロではありません。
もちろん断りましたが、勤務していたときお客様から依頼されたこともありましたし笑

その意味で、税務署に提出した決算書と勘定科目内訳書、借入残高表を資料として求めることで、不正はしていないかどうかの確認もしているんです。

 

まとめ

銀行が借入残高表を欲しがる理由は、他行の状況・動向を知りたいためです。
他行の動向とは、「新規融資を提案していないか」「金利はどうなっているか」「担保はどうなっているか」「数字が悪いけど他行は撤退方針を出していないか」などが挙げられます。

また、銀行は借入残高表を作成していない会社でも、決算書に添付する勘定科目内訳書から借入に関する情報収集ができるので、資料作成がやぶへびになることはありません。

足元の状況次第なので、借入残高表を提出することで、メリットにもデメリットにもなります。

しかし、借入残高表を作成しなくてもある程度情報を掴まれるのであれば、初めから作成しておいて、自社の資金繰り資料としても活用しつつ、銀行にも情報開示して良好な関係を築くことが最善ではないかなと思いますが、いかがでしょうか。

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