昨年、いくつか法人成り(個人事業主から株式会社や合同会社など法人組織へ変更すること)をお手伝いしました。
前々から検討されていた方々だったので、特段、今の税制上、旬な時期というわけではありません。たまたま時期が重なったというだけです。
個人事業主では累進課税(所得の増加に伴い税率も上がる)が採用されるので、一定の所得基準を超えた方が法人成りを選択する場合が多く、我々もそのように提案しています。
今回は法人設立について、3回に渡り色々解説していこうと思います。
第一回目の今回は、法人設立のメリットについて。
今回の記事を読み進めていただければ、個人か法人どちらで事業を始めたら良いのか迷っている方、または現在フリーランスで仕事をしている方のなかでも、年々税金が増えてきたなと感じる方には、参考にしていただける内容だと思います。
目次
法人設立のメリット
法人設立のメリットについて解説していきます。
メリットについては大きく4つの側面(私が思いついただけなので、もっとあるかもしれません)で考えられます 。
法人設立のメリット
- 取引先、金融機関など外部利害関係者に対して社会的信用力が高い
- 社会的信用力が高まることにより、人材を確保できる
- 万が一の倒産時には責任を限定できる
- 税制面でのメリットが大きい
以下、それぞれの法人設立のメリットを解説します。
取引先、金融機関など外部利害関係者に対して社会的信用力が高い
よく聞きますよね。でも、根拠なく社会的信用力があるわけではありません。
法人設立の場合は、法務局への登記が必要になります。
この登記情報は、社名、本店所在地、事業内容、代表者の住所・氏名、取締役の氏名、会社規模を示す資本金などが公示されるので必然的に社会的な信用力が高まります。
また、金融機関など資金調達面でも、どうしてもプライベートと事業が一緒になりがちな個人事業主に比べて社会的信用力が高いため、融資が受けやすく、利率の面でも優遇されています。
社会的信用力が高まることにより、人材を確保できる
これは勤めていたときの記憶や、これから勤めるなら・・・と想像すれば、簡単にイメージできると思います。
全部とは言いませんが、プライベートと事業が一緒になりがちで、社会保険など福利厚生が充実しているとは言い難い個人事業主のどちらに勤めたいかという問題です。
どちらに優秀な人材が集まりやすいのか・・・言うまでもありませんよね。
やはり環境は重要でしょう。整った環境では、様々な優秀な人材が集まるようになります。
楽しく充実した環境のもと、お互いのモチベーションも高くなりますので、自然と社員の定着率も高まります。
万が一の倒産時には責任を限定できる
個人事業主では万が一の倒産時の債務弁済は原則、無限責任です。
無限責任とは、事業用の財産とプライベートの財産を含めた全財産を処分して債務弁済に充てなければならないということです。
一方、法人では万が一の倒産時の債務弁済は原則、有限責任です。
有限責任とは自身の出資の範囲内での責任に限定されますので、プライベートの財産まで債務弁済に充てられることはありません。
しかし、銀行融資の個人保証をした場合や、経営状態が悪くなってきた時に会社財産を処分するなどして意図的に財産を個人へ移転することにより債権者を欺いた場合などは、この限りではありませんのでご注意を。
税制面でのメリットが大きい
いくつかありますので簡単に説明していきたいと思います。
個人事業者の課税方法と法人の課税方法の違い
個人事業主は売上から経費を差し引いた利益(所得といいます)に課税されますので、以前のブログで解説した給与所得控除の適用はできません。
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一方、法人でも売上から経費を差し引いた利益に対して課税されますが、個人事業主との違いは大きく3つあります。
1つは売上から差引く経費には経営者自身の役員報酬も含まれます。
2つめは、経営者自身が受け取る役員報酬には給与所得控除が適用できます。
この2つの時点で何が起こっているかわかりますか?
一度目は法人の利益を計算するとき、二度目は受取る個人で年末調整や確定申告の時の給与所得控除として、経費が二重に引かれていることが確認できます。
後述しますが、法人は一定の親族への給与も経費にできる点も考慮すべきです。
良い悪いは別として、現行制度ではこうなっています。
3つめは税率の違いが挙げられます。
個人事業主には所得税が適用され、儲ければ儲けるほど税率も上がるのに対して、法人では法人税が適用され、利益800万円超はどれだけ稼いでも税率は一定です。
出張などの日当を経費にできる
法人で出張旅費規程を作っていて、その規程通りに支給(常識の範囲内での支給に限ります)されたものは経費になり、受け取る側は給与に含まれず、非課税の扱いになります。
詳しくまとめたものがあるので、気になる方はこちらをご覧ください。
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出張手当を使った節税【法人なら旅費規程は絶対つくりましょう】
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業務に従事していれば、生計一の親族にも給与や退職金を支給することができる
個人事業主も親族への給与の支給は認められていますが、届出が必要です。
また、このようにして給与を支給した場合、支給金額がどれだけ少なくても給与を支給した個人事業主において、配偶者控除や扶養控除の適用はありません。
一方、法人では届出不要で給与の支給ができます。
また、支給金額が少なかった場合、給与を支給した経営者において配偶者控除や扶養控除も適用可能です。
また、個人事業主では支給できない退職金の支給も可能です。
このように、法人では親族への給与や退職金も経費計上が認められているので、課税される利益を、理論上、法人、経営者、親族(業務に従事していることが前提です)に分散することが可能なんです。
まとめ
他にも税制面でのメリットや書くべき点がありますが、とても1回では書けないので、今回はこのあたりで終了します。
私(個人事業主)も今回の記事を色々書きながら、法人の方がやっぱり良いよな~と思ってしまいますが、個人事業主には個人事業主の良さもあります。
この辺りはまた次回以降に!!