少し前に銀行融資に関する、こんなご相談がありました。
銀行融資の依頼をするために決算書を提示したところ、銀行の担当者より「役員報酬が少ないですね。」と言われ、新規の融資に難色を示されました。
その方は、役員報酬がなぜ融資に影響するのか疑問を持ったようです。
先日の記事でも少し触れましたが、実は金融機関は、この役員報酬についていくつかのチェック項目を持っています。
詳しく知りたい方は、こちらをご確認ください。
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概ね、役員報酬と銀行融資の関係性で、みなさんが気になるところは、下記のような感じでしょう。
役員報酬と銀行融資の関係
- 役員報酬が銀行融資に影響するのか
- 影響する場合、多い方が良いのか、それとも少ない方が良いのか
- 仮払金や貸付金のような形で、会社から役員にお金が流れていないか
さて、本当に、この役員報酬が銀行融資に影響するのでしょうか・・・
答えはYESでもありNOでもあるという感じです。
しかし、役員報酬が多いから、少ないからという理由で新規の融資が受けられないなんてことはありません。
金融機関が気にしているのは、返済原資となる利益です。
役員報酬は経費なので、返済原資となる利益に直接影響することになります。そこで役員報酬もチェック項目として確認しているという程度です。
ただし、それだけではありません。
例えば役員報酬が極端に少ない場合、会社から、何らかの形で、役員にお金が流れていないかを確認します。
もし、何らかの形でお金が流れていることが確認できれば、その役員報酬は利益を出すために少なくしていることがわかります。
ほぼ、結論的なことを書いてしまいましたが、読み進めていただければ、より詳しく役員報酬と銀行融資との関係が見えてくると思います。
役員報酬と銀行融資の関係【役員報酬が銀行融資に影響するのか】
役員報酬が多い、少ないは、銀行融資には影響しません。
ただし、役員報酬は経費の一つで、自身の裁量で何とでもできる性格上、返済原資となる利益がどうなっているのかということには影響してきます。
影響する場合、多い方が良いのか、それとも少ない方が良いのか
役員報酬は、返済原資となる利益の計算に影響するため、役員報酬が多い方が良いのか、少ない方が良いのかは、利益によります。
役員報酬が少ないと会社の経費は少なく済みますので、利益が多く計上されることになります。逆に役員報酬が多い場合は、会社の経費は多くなりますので、利益は少なく計上されます。
借りる側の心理として、借りたいときは見栄えを良くしようとしますので、前者を選ぶことになります。
金融機関も貸す側の心理として、無理してない?ちゃんと利益計算している?とチェックしています。
理由は、税金を払った後の「税引き後利益」とお金の出ていかない経費である「減価償却費」を合わせた簡易キャッシュフローが返済原資と考えているからです。
そのため金融機関は決算書を見て、役員報酬が少ない場合、利益を多く見せるために役員報酬を削っているのでは?と疑います。
例えば役員報酬を受け取る経営者が、奥さん、子供2人の家族構成でありながら役員報酬が月20万円だった場合、本当に生活が出来ていますか?と疑います。
他に収入(不動産、配当などによる収入、別に奥様へ給与を支給している、または別のところで働いているなど)があれば問題ありませんが、他に収入が無い場合は、いくら質素に生活している旨、主張しても納得してくれず、最低30万円ぐらいをみて税引き後利益を計算し、返済原資を見積もります。
仮払金や貸付金のような形で、会社から役員にお金が流れていないか
役員報酬を受け取る経営者が独身、実家暮らしで役員報酬が20万円だった場合はどうなるのか。
この場合、一般的に生活できないこともないので、納得してくれる可能性もありますが、金融機関は別の項目をチェックします。
それは、経営者への仮払金(後日、経費精算をする予定で支給したものなど)や経営者への貸付金(会社が経営者へ恒常的に貸付をおこなっているなど)が決算書に記載されていれば、20万円での生活が成り立っていないと判断されます。
逆にこのような場合でも、経営者からの借入金(会社の資金繰りが苦しい時は、会社にお金を入れているなど)があり、毎月の役員報酬とは別に、この借入金の返済を会社から受けていれば、役員報酬は20万円でも生活できていると主張できます。
まとめ
銀行融資の際、役員報酬が多いから、少ないからといって問題になることはありません。
金融機関が役員報酬を問題とするのは、返済原資となる利益計算の過程で、決算書のお化粧をし過ぎていないか、無理なく貸したお金を返済してもらえそうかという点を確認するときだけです。
幸い、相談に来られた方は、奥様へ給与が支給されており、その事実を説明したところ問題なく新規融資が受けられましたが、役員報酬を低くしている場合は、金額設定の根拠をきちんと説明できるようにしておく必要があります。