創業融資の自己資金要件って単純なようで、実は少しだけ奥が深いんです。
通帳にいわゆる「見せ金」として用意できれば良いと軽く考えている方、そんなに簡単ではありません。いまは結構厳しくチェックされます。
今回いくつかの事例を出しますが、状況をよく考えると、確かにそうやなと理解していただけるかと思います。これから創業をお考えの方は、是非読み進めていただき、自己資金要件で誤解を招かないようにしてください。
創業融資の自己資金要件について
まず創業融資の自己資金要件について、確認したいと思います。
日本政策金融公庫のHPでは、自己資金要件は下記のように記載されています。
自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方日本政策金融公庫HPより
これだけ読むと、100万円の創業融資を受けたい場合、とりあえず10万円持っていたら良いねんなと理解できます。
確かに金額的要件は満たすのかもしれませんが、その10万円の出所が不明では、自己資金要件を満たしているとはいえないんです。
この自己資金要件が誤解なく、正しく理解できるよう、いくつか事例を紹介していきたいと思います。
本当にその自己資金が事業に使われるか
たまに一時的に用意したお金を使って、自己資金要件をクリアしようと考えている方がいらっしゃいますが、ここは厳しくチェックされますので簡単にバレます。
自己資金要件は融資申込時点で、自己の通帳にその残高(いわゆる見せ金)があればOKというわけではありません。
例えば100万円の自己資金要件を満たしたい場合、通帳の100万円がどこからやってきた100万円か証明する必要があります。
要するに、出所不明なお金は、あなたのお金とは考えてくれません。
自己資金要件OKな事例
- コツコツと毎月定期預金で貯めていた
- 受取った退職金をそのまま自己資金とする
- 両親からの援助を受けた
自己資金要件NGな事例
- 返済予定のお金は自己資金ではない
- 領収書は自己資金ではない
- タンス預金を自己資金としたい
コツコツと毎月定期預金で貯めていた
創業に対する真剣さを計画性の面でアピールでき、金融機関からすると最も心証の良い自己資金の確保といえ、全く問題ありません。
この場合、毎月及び定期預金解約時の通帳資料を提出すれば問題なく自己資金要件をクリアできます。
受取った退職金をそのまま自己資金とする
勤め先を退職した時に支給された退職金を自己資金とする場合も問題ありません。
退職金の源泉徴収票と振込口座の資料を提出することにより自己資金要件をクリアできます。
両親からの援助を受けた
両親から借りた(毎月返済をする、または余裕が出たら返済するなど)ものではなく、返済を求められない前提で援助してもらったという場合に限りOKです。
ただし、この場合、資金援助者である両親の通帳を提示する必要があります。
なぜか・・・?
資金援助者である両親は、どうやってそのお金を用意したのか、他人から借りたものではないかどうかの確認をするからです。
やっぱりポイントは、出所が明らかにされたお金なんです。
返済予定のお金は自己資金ではない
ノンバンクから、または両親、他人から借りてきて、それを自己資金と主張しても、それはあくまで返済予定のお金であって、事業で使われるお金ではないため、自己資金としてみてくれません。
また、借りてきたお金を自己資金と装う行為もすぐに見抜かれます。
上述しましたが、そのお金が在ればOKなのではなく、そのお金がどこから来たのかを重要視するからです。
領収書は自己資金ではない
ここ結構誤解している方が多いところです。
融資を受ける前にいくつかの設備投資をし、その領収書をかき集めて自己資金と主張する場合も、その設備投資をしたお金がどこから来たのかを証明する必要がありますので、領収書だけでは自己資金要件をクリアできません。
タンス預金を自己資金としたい
これも同じ考え方です。そのお金がどこから来たかの証明ができません。
タンス預金の場合は、1年ぐらい預金に入れてもらって手をつけず、時間に証明してもらうしか方法はありません。
創業融資は理論上、自己資金の9倍の資金調達ができる?
額面通り受取ると、このように解釈できますが、自己資金の9倍の資金調達はとても厳しいと理解してください。
確かに自己資金の9倍の資金調達が出来た事例はありますが、業界での豊富な経験に加え、マネジメント能力など創業者のキャリアの要素が重要視されますので、一般的には自己資金の2~4倍程度の資金調達を考えて事業計画を立てましょう。
まとめ
創業融資の自己資金要件を解説しました。
見せ金として用意できればOKではなく、ポイントは「そのお金がどこからやってきたのか」です。
これから創業をお考えの方は注意してください。
また、資金調達額が大きすぎると金融機関も身構えますので、創業者のキャリア要件など審査が厳しくなります。
自己資金要件の意味を理解していただき、計画的に創業の準備を進めてください。