新型コロナウイルスの影響で、日本政策金融公庫であったり、保証協会から融資を受けられるといっても、それはあくまで、コロナ以前は健全だった企業だけなんですね。
健全だった企業とは、財務体質に問題がなく、返済資力もある企業です。
新型コロナウイルスの影響を受けて、一時的に状況が悪化した企業を救うべく、日本政策金融公庫は新型コロナウイルス感染症特別貸付だったり、セーフティネット保証の4号・5号などの支援策が用意されているんですね。
そして時々聞こえてくるのが、融資の審査に落ちたというもの。
色々な支援策が用意されると、申し込めば誰でも借りられるというかんじになっていますが、決してそうではありません。
あたりまえですが、コロナ以前に赤字が続いており、債務超過状態も相当期間続いている会社となると、おそらく金融機関は「貸せない」と判断することになるでしょう。
なので、普段から赤字や債務超過状態の解消に取り組んでおかなければいけません。
しかし、なぜだか赤字や債務超過状態って放置されがちなんですよね。
そこで、今回は債務超過状態の解消方法のひとつである、数字面での経営改善についてお話ししようと思います。
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こんな声が聞こえてきそうですが、そうなんです。その通りです。
でも、おなじ利益でも、単純に利益をだそうと考えるのではなく、「この会社が必要とする利益(お金)はいくらか?」という考え方です。
イメージとしては、損益計算書をしたから考えるという方法です。
債務超過の解消のための経営改善
はじめに言っておくと、債務超過状態の解消方法はいくつかあります。
例えば、DES(デス)とか擬似DESといって、役員借入金を資本金に振り替えてしまうといった手法や、資本金の増資、固定資産などを処分して返済に充てるなどです。
これらの解消方法も確かに良いんですが、個人的には根本の問題は解決できていないのかなと思っています。
一時的には有用であっても、やはり数字面での経営改善が図られないと、数年後、また債務超過状態に陥ってしまいます。
まぁ、相続対策の面から、DESを使いつつ経営改善を図るというのが一番良いのかなと思いますが、今回は、数字面での経営改善の考え方をお話していこうと思います。
債務超過の状態ってどんな状態?
意味は分かっていても、なかなかイメージできないかもしれませんが、簡単にいうと、資産よりも負債が多くなっている状態のこと。
貸借対照表と損益計算書は下記のようなイメージでしょうか。
ホルモン焼き屋さんは、負債が資本を上回っていますよね。
いま会社を閉めるとなった場合、資産をすべて現金化しても負債の返済ができないということ。
仮に長期借入金の一部に、役員からの借入金があって、それをDESによって資本金に振り替えたとしても、会社の損益状態がずっとこのままだと、数年でまた債務超過状態に戻ります。
その意味で、やはり改善すべきは会社の経営改善、経営体質を変えることが重要です。
会社の経営改善、経営体質ってどこから変えれば良いのか
結果的には利益をだせば良いんですが、いくらの利益が必要なのかを考えます。
その際、下記のように損益計算書を一番下から作り上げるイメージです。
スタートは、利益が最低限いくら必要なのかということです。
最低限というのは、キャッシュフローの要素がからんでくるんですが、簡便的には負債(主に借入金)の返済額から算定します。
理由は、利益から借入金の返済をするからです。利益がでていないと借入金は返済できないですよね。
借入金の返済が20万円/月だとすると、年間240万円の返済原資(利益)を確保しなければならないというところからスタートするということです。
ただし、これはあくまで税金を払った後の利益です。
税率が35%と考えると、税引前当期純利益は370万円必要になります。
スタートが決まると、あとは各項目別にムダがないかどうかを確認していきます。
各項目別とは、経常利益、営業利益、売上総利益といった項目です。
経常利益の改善
税金コストを考えた税引前当期純利益が決まると、会社の経常収支には一体、何が発生しているかを紐解きます。
なお、特別利益とか特別損失は突発的なものなので、ここは考慮しません。
収益に関しては、雑収入とか預金利息など会社がメインとしている商売以外の副次的なものがメインとなるので、金額は知れているところがほとんどでしょう。
ここを頑張って上げても仕方がないので、考えるべきは、費用面ですね。
ほとんどが金融機関への利息なので改善の余地がないのかもしれませんが、少しでも可能性があるなら、金融機関へ交渉してみることも良いのではないでしょうか。
その際、数値計画をみせて、しっかり説明することで、いくらかの改善が期待できるかもしれません。
営業利益の改善は、販管費のリストラが重要
経験上、ここが最も重要なのかなと思います。
販管費って人件費から交際費、消耗品、水道光熱費、家賃、保険、通信費など多岐に渡ります。
絶対にどこかにムダが見つかるはずです。
このムダというのは、必要か必要でないかという判断基準はもちろんなんですが、不採算になっている事業や部門の見直しも含みます。
なので、不採算部門自体の見直しとなると、売上の減少は覚悟しなければなりませんが、大事なのは売上ではなく、利益であることを忘れないようにしてください。
損益計算書を、利益から考えるという計画を立てると、案外、スパッと売上の減少は考えられるかもしれません。
なお、人件費は後回しにしておいてください。人件費は最後の最後です。
先に後述する売上総利益の見直しを優先しましょう。
売上総利益の改善は原価率の見直しを!
じつは、ここの改善は一番効力を発揮してくれます。
またまたホルモン焼き屋さんに登場してもらいますが、ホルモン焼き屋さんの粗利率は36%です。
ということは、その逆の原価率は64%ということになりますよね。
売上原価は、下記のように計算されます。
メモ
前期に余っていたホルモン+当期仕入ホルモン-期末で余ったホルモン
3つの要素それぞれが原価率のカギを握っているんですが、ポイントは、在庫をいかに少なくするか。
実際に数字を当てはめて考えてみます。
現時点の売上原価
300(前期ホルモン)+600(仕入)-200(当期末ホルモン)=700(売上原価)
日々の在庫を少なくしようと計画しますので、当然、仕入も少なくなりますよね。
そうすると、翌期末にはこんなかんじになっていると考えられます。
翌期の売上原価
200(前期ホルモン)+500(仕入)-100(当期末ホルモン)=600(売上原価)
原価率の改善でいうと、64%だったのが、55%になったということになります。
少々極端な数字の動きかもしれませんが、原価率が改善できると、連動して粗利が上がります。
ここの率の変動は、売上に対しての率なので、数字に与えるインパクトは絶大です。
例えば、売上5億円の会社が、原価率をたった1%改善するだけで、500万円の粗利が発生するんですね。
まとめ
債務超過状態の解消のため、数字面での経営改善についてお話しました。
たしかに考え方の要素が強いんですが、経験上、この考え方がベストなのかなと考えています。
売上を増やしましょうという改善計画は空振りに終わる可能性が高いですが、利益確保を前提に考えると、意外と簡単にうまくいったりするものです。