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雇用調整助成金は課税される?経理処理はどうするの?

2020年5月13日

事業者に雇用を維持していただくうえで、いちばん必要なはずの雇用調整助成金。

専門家の社労士さんからしても、制度がややこしくて、申請から給付まで時間がかかっており、残念ながら制度として機能していないとまで言われる始末。

 

さて今回は、雇用調整助成金の制度の内容を説明するものではなく、雇用調整助成金の経理処理をメインとしたお話です。

また、税金については、会社では法人税、個人事業主では所得税がそれぞれ課税されますが、消費税は課税されません。

 

事前の休業等計画届の提出が必要な一般措置である雇用調整助成金については、下記のように経理処理を行う必要があります。

 

はてな

  • 支給決定通知書が届いた日に収益計上
  • 勘定科目は雑収入でOK
  • 決算日までに支給決定通知書が届かなくても、見積り計上が必要

 

また、事前の休業等計画届の提出不要な特例措置である雇用調整助成金については、交付決定日の属する事業年度に収益計上すればOK

決算日をまたぐ場合でも、見積り計上は不要ですのでご注意を。

 

注意ポイント

2021年2月26日に国税庁より、雇用調整助成金の収益計上時期が示されました。

これによると、新型コロナに伴う特例措置に基づき交付を受けた雇用調整助成金については、「交付決定日の属する事業年度」に収益計上することとなると示されました。

 

雇用調整助成金(一般措置)の取扱い

雇用調整助成金は、新型コロナウイルスなどの影響を受けて経済活動が縮小してしまうような事業者が、従業員を一時的に休業や教育訓練を行ったり、出向させたりすることで雇用の維持を図った場合、その従業員へ支給した休業手当や賃金の一部を国が助成するというもの。

この助成金の性格は、事業者が従業員へ支給した休業手当や賃金の一部を、国が事業者へ支給するというもの。

この性格が、課税上や経理処理に影響するので、わりと重要なとこなんです。

 

課税上の取扱い

まずは、消費税から。

雇用調整助成金は、国から事業者へ、サービスなどの対価として支給するわけではないので、消費税は課税対象とはなりません。

 

雇用保険法の規定による雇用調整助成金・・・のように、その給付原因となる休業手当、賃金、職業訓練費等の経費の支出に当たり、あらかじめこれらの雇用調整助成金等による補填を前提として所定の手続をとり、その手続のもとにこれらの経費の支出がされることになるものであっても、これらの雇用調整助成金等は、資産の譲渡等の対価に該当しない。

消費税基本通達5-2-15(補助金、奨励金、助成金等)注書き

 

会計ソフトでは勘定科目を「雑収入」として、消費税のフラグは、「消費税対象外」とか「対象外」を選んでおけばOKです。

 

そして、法人税や所得税、住民税や事業税などの地方税については、法人、個人事業主ともに課税されます。

ちなみに、個人事業主の方は、事業所得に該当します。一時所得などではありませんので、ご注意を。

ここで重要なのが、「いつ課税されるのか」、「いつ収益計上しないといけないのか」ということです。

 

経理処理の取扱い

基本的には、下記のように仕訳すればOKです。

支給決定通知書が届いた日

ポイント

未収入金 ××× / 雑収入 ×××

振込みがあった日

ポイント

預金 ××× / 未収入金 ×××

ただし、注意が必要なのが、支給決定通知書が決算日までに届かなかった場合。

さきほど、雇用調整助成金は、「事業者が従業員へ支給した休業手当や賃金の一部を国が事業者へ支給するというもの」で、この性格が課税上や経理処理に影響するといいました。

どういうことかというと、期間損益計算の大原則である、収益費用対応の原則が作用するということ。

要は、事業者が従業員へ支給した休業手当や賃金は「費用」、一方、国が、その費用の一部を負担する雇用調整助成金は「収益」と考え、これを同一事業年度内で計上しなさいということです。

 

法人の支出する休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために雇用保険法・・・等に基づき交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する事業年度終了の日においてその交付を受けるべき金額が具体的に確定していない場合であっても、その金額を見積り、当該事業年度の益金の額に算入するものとする。

法人税基本通達2-1-42(法令に基づき交付を受ける給付金等の帰属の時期)一部抜粋

 

雇用保険法・・・に基づき休業手当、賃金、職業訓練費等の経費を補填するために交付を受ける給付金等については、その給付の原因となった休業、就業、職業訓練等の事実があった日の属する年分においてその金額が具体的に確定しない場合であっても、その金額を見積もり、当該年分の事業所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。

所得税基本通達36・37共-48(法令に基づき交付を受ける給付金等の処理)一部抜粋

 

読んでいただくとわかるように、雇用調整助成金の申請から支給までのあいだに決算日がやってくる場合、翌事業年度に支給決定通知書が届いたとしても、事業者が従業員へ支給した休業手当や賃金である「費用」のみを計上したままで決算を終えてはいけません。

国からの費用の一部を負担する雇用調整助成金という「収益」の見積り計上もセットですので、ご注意ください。

費用と収益が紐付き関係にあるということをお忘れなく。

 

まとめ

雇用調整助成金は法人税や所得税が課税されるということは分かっていても、「いつ」収益計上しなければいけないのかということは、税理士でも忘れがちなところです。

もしかすると、知らない方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、2021年2月26日、国税庁より、新型コロナに伴う特例措置に基づき交付を受けた雇用調整助成金については、「交付決定日の属する事業年度」に収益計上すると示されました。

ですので、新型コロナに伴う雇用調整助成金については、決算日をまたいだとしても、見積り計上は不要です。

 

税務署が大好きな期ズレといわれるようなところを確認しました。

とはいっても、事業者が受ける新型コロナウイルスの影響は深刻なので、赤字になる方が多いでしょう。

雇用調整助成金が課税される、見積り計上が必要といっても、結果的に課税されなかったり、見積り計上を失念していても何の影響もないのかもしれませんが、経理処理の基本は押さえておいてください。

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