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賃料を減額や減免した場合の課税関係【新型コロナウイルス影響による税務上の取扱いが明確化】

2020年4月14日

 

国税庁ホームページの「新型コロナウイルスの感染拡大防止対応FAQ」に、賃貸物件のオーナーが賃料の減額をおこなった場合の課税上の取扱いが示されました。

 

結論としては、新型コロナウイルスの影響で賃料の支払が困難な賃借人である事業者からの求めに応じて、復旧支援を目的とした賃料の減額は、寄付金として取り扱わず、税務上の損金として計上可能であると。

また、賃料の減免(債権の免除等)をおこなった場合も同様の取扱いだとか。

 

実は、これって、別段、新型コロナウイルスの影響で特別な取扱いを設けましたみたいなかんじになってますけど、もともと通達では、災害を受けた取引先の支援をした場合の取扱いは寄付金にならないと示されています。

でも、あえてこれを国土交通省ホームページでも明らかにし、そして国税庁でも新型コロナウイルスの感染拡大対応FAQに載せるというのは、国として補償はなんもできないけども、この通達が使えるのよ!ってアピールがなんとなくイラっとするのはわたしだけでしょうか。

 

念のため、通達なども含めて確認したいと思いますが・・・

 

新型コロナウイルスの影響による賃料の減額と減免をした場合の税務上の取扱い

結論としては冒頭のとおり、寄付金とはならず、税務上の損金でOKとのこと。

なお、税務上の損金として処理するための要件が3つあります。

 

賃料減額等が寄付金とならない要件

  1. 取引先等において、新型コロナウイルス感染症に関連して収入が減少し、事業継続が困難となったこと、又は困難となるおそれが明らかであること
  2. 賃料の減額が、取引先等の復旧支援(営業継続や雇用確保など)を目的としたものであり、そのことが書面などにより確認できること
  3. 賃料の減額が、取引先等において被害が生じた後、相当の期間(通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいいます。)内に行われたものであること

 

この3つの要件を満たせば、賃料の減額や減免は寄付金とはならずに、税務上の損金扱いにしてくれます。

また、賃料の減免、いわゆる債権放棄ってやつですが、それを受けた側では、受贈益(債務を免除されたという経済的利益)がたって、課税されるのでは?って思う方がいるかもしれませんが、大丈夫です。

 

メモ

地代家賃 100 / 未払金 100

未払金 100 / 債務免除益 100

 

このように、すでに計上した地代家賃の経費と、債務免除益という収益が同額なので、結果的に課税されることはありません。

 

通達ではどうなっていた?

もともと通達では、災害を受けた取引先支援をした場合は寄付金にならないといいました。

その通達がこれです。

 

9-4-6の2 法人が、災害を受けた得意先等の取引先(以下9-4-6の3までにおいて「取引先」という。)に対してその復旧を支援することを目的として災害発生後相当の期間(災害を受けた取引先が通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間をいう。以下9-4-6の3において同じ。)内に売掛金、未収請負金、貸付金その他これらに準ずる債権の全部又は一部を免除した場合には、その免除したことによる損失の額は、寄附金の額に該当しないものとする。
既に契約で定められたリース料、貸付利息、割賦販売に係る賦払金等で災害発生後に授受するものの全部又は一部の免除を行うなど契約で定められた従前の取引条件を変更する場合及び災害発生後に新たに行う取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様とする。(平7年課法2-7「六」により追加)

(注) 「得意先等の取引先」には、得意先、仕入先、下請工場、特約店、代理店等のほか、商社等を通じた取引であっても価格交渉等を直接行っている場合の商品納入先など、実質的な取引関係にあると認められる者が含まれる。

災害の場合の取引先に対する売掛債権の免除等

 

もともと、この通達は、平成7年1月の阪神・淡路大震災のときに個別通達として公表されたものを基本通達として整理・追加されたものなので、災害と表記されているんです。

今回の新型コロナウイルスの影響も、この災害の範囲に含めて良いよってことなんだと思います。

 

ただし、新型コロナウイルスの影響によるものは、災害と違って見た目ではわからないもの。
その意味で、客観的にも判断可能な上記3要件を設けたんでしょう。

 

基本的な取扱いってどうなんの?

念のため確認しておくと、通常、賃料の減額に合理的な理由がないと、寄付金扱いになります。

例えば、こんな場合も寄付金扱いされます。

 

A社さん、ここの賃料すこしまけてくれへん?
みんなには月10万で貸してるけど、Z社の○○ちゃんの頼みやったら、タダでええよ。

 

この取引の場合は、Z社は、課税関係はなにもなく、A社のみ寄付金課税されるんですね。

 

Z社

地代家賃 120 / 受贈益 120

経費と収益が両建てとなるので、結果的に課税所得が発生しない

 

A社

寄付金 120 / 受取家賃 120

会計ではなにも処理しなくても、税務上、この仕訳が成立しています

 

あれ?A社も経費と収益が両建てになってるから、課税所得が発生してないんちゃうんと思われるかもしれませんが、この寄付金の大部分は税務上の損金扱いが認められませんので、結果的に課税所得が発生するということになります。

無制限に寄付金の経費計上を認めてしまうと、国が寄付をしていることになってしまうため、このような措置が設けられています。

ちなみに、国や地方公共団体に対する寄付金は無制限に経費処理を認めているのに対して、それ以外の寄付金は、資本金や利益など会社の規模に応じて限度額を計算し、限度額を超える分は、税金を計算するうえでは経費とされません。

 

まとめ

何度も言いますが、新たに課税上の取扱いが設けられたとかいう話ではありません。

元々用意してあった取扱い(通達)に具体的要件を示して、安心して(税務リスクを無くして)、使いやすくしただけです。

でも、これって、賃貸物件を所有する会社への協力要請みたいなもの。

一方、先進諸国では、家賃の支払い猶予を法制化する動きがあるとか。

個人的には、日本は、民間に負担を要請するばっかりではなく、国が積極支援する姿勢をみせてもいいのではないかと思うんですが、いまのところ要請ばっかりですね!

 

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