令和2年度の税制改正で、個人の海外不動産を使った節税が封じられましたね。
数年前から会計検査院から目をつけられていたので、業界の方は投資家へアナウンスはしていたそうなんですが、令和3年以後から適用されるみたいです。

なぜ今回は個人に限定されたの?
このあたりって気になりますよね?
なぜ節税できていたかというと、とてもシンプルな話で、ポイントは日本と海外の耐用年数のギャップ。
日本は一般的に数十年経過した建物って価値がないってよくいわれますよね。でも、海外不動産は建物の寿命が長いので、中古物件でも建物自体に価値があります。
すると、中古建物でも価値があると考えている海外不動産を、中古建物には価値がないと考えている日本の税法での耐用年数を使って経費に落としていくことになるので、短期間で多額の経費が生まれます。
また、売却時にも日本の税法は手助けしていたんですね…
個人がダメだったら法人を使えばええやんってなりますよね…
今回はこのあたりについてまとめようと思います。
海外不動産の節税がアウト!

改正内容はシンプルで、令和3年以後、中古の海外不動産について、短い耐用年数を使って発生させた減価償却費による、国外不動産所得の損失はなかったものとみなされます。
ということは、海外不動産を使って生じた損失を、他の給与所得や事業所得にぶつけて税額の軽減は図れなくなったということです。
封じられた海外不動産の節税スキームってどんなものだったの?
今さらって話なんですが、せっかくなのでまとめときます。
日本の新築木造建物の耐用年数は22年なんですが、中古であれば簡便的に計算することができて、22年経過した不動産だと、耐用年数は4年ということになります。
問題あるんちゃうの?って思われるかもしれませんが、日本では22年経過した木造住宅はほとんど値がついていないので、4年で経費に落としても特に問題ないんですね。
ただ、海外不動産の場合には問題があったんです。
海外の建物は日本とは比べ物にはならないぐらい耐用年数が長いので、必然的にそこには価値があって、結構な値がついていることが多いんです。
例えばハワイで1億円の22年以上経過した木造の別荘を投資物件として買った場合、仮に建物価格が半分の5,000万円(不動産価額の7割、8割が建物という場合も多いようです)だったとします。すると、この5,000万円をたったの4年で経費に落とすことができていたんですね。
単純に一年当たりに減価償却費として経費に落とせる金額は1,250万円にもなります。
そこで生まれた損失を給与所得などにぶつけて、所得税の還付を受けていたんですね。
そして、いざ、売却のときにも日本の税法が手助けしてくれていました。
不動産を売却した時の収入は、譲渡所得といって、給与所得などとは分離して課税されるので、給与所得では住民税含めて最高税率55%だったとしても、5年超の所有期間であれば税率は住民税を含めても20%(上記税率含め、復興特別所得税2.1%上乗せされます)が適用されることになり、トータルでみても節税が図れていました。
なぜ今回は個人に限定されたの?
おそらく、個人と法人の税率の違いが影響しているんでしょう。
個人では累進税率ですが、法人では比例税率といって、所得が増えても税率は一定という違いがあります。
また、個人の場合は譲渡所得については、分離課税とされているところも影響してますね。
法人で買ったとしても中古資産の耐用年数計算など一緒なので、上記事例だと1,250万円を経費に落とせますが、売却するときにはその分の課税の取戻しがされるので節税効果がありません。
結果的に法人では課税の繰延べでしかありませんが、個人では売却のときの出口でも税額が軽減されていたので、封じられたという感じなんでしょうね。
しかし、今回の改正は個人に限定されていても、いずれ法人の方でも封じられそうな気はします。
というのも会計検査院が問題視していたとき、中古資産の耐用年数計算自体にメスが入るかもしれないなどと噂されたぐらいなので、今後、中古資産の耐用年数を使った課税の繰延べ行為について、なんらかの形で改正されてもおかしくないかなぁと思います。
まとめ
個人的にも、ハワイの不動産に興味があったので、色々調べた時期がありました。
今回の改正で節税のうまみはなくなりましたが、わたしは富裕層でもなんでもないので、影響はな~んもありません。
将来、ハワイの不動産を買って、好きな時に使って、使っていない時は人に貸す。
小さくてもええんです。
理想ですね。