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インターネット、SNSでの誹謗中傷対応費用は経費じゃない!?【フリーランスや個人事業主、会社ではどうなる?】

2020年2月27日

2020年3月の税務弘報(vol.68/No.3)に、個人的に気になる記事がありました。

なにやら、ネガティブサイト削除費用は必要経費にならないとの裁決が下されたとのこと。

記事では、この裁決事例は公表されていないこともあって、詳しくはわからないとしつつも、概要は下記のような事例です。

 

メモ

請求人は医師で、自身の誹謗中傷記事を削除した費用を事業所得の計算上、必要経費として処理していたが、これが問題となって争われた事例。
審判所では、個人的への誹謗中傷なのかクリニックへの誹謗中傷なのかわからず、線引きも難しい。
また、取引記録をちゃんとつけておらず証拠もなかったため、必要経費には認められないとのこと。

 

この請求人である医師の場合は、自身で経費性を証明できる資料を用意していなかったので、仕方ないのかなという感じですが、税務弘報では、この事例を企業(法人)ではどうなるかということに言及していたので、まとめていきたいと思います。

現在、ホームページやブログ、SNSなどご自身で運営している方も多いと思いますが、目立てば目立つほどネガティブ記事や誹謗中傷してくる方は少なからず現れます。
そんなときに対応する費用は、フリーランスや個人事業主、会社の場合だと、どうやったら経費にできるのかという目線で解説していきます。

 

インターネット関連費用で経費にできるものの確認

インターネットや、SNSに関連する費用で経費にできるものをまずは確認していきましょう。
言い忘れていましたが、念のため前提条件を確認しておきます。
これらの費用でもプライベートのものは経費にできません。あくまで事業で使っていることが前提ですのでお間違えの無いように。

先に結論をいうと、これらの経費は日常的に発生する費用と臨時的に発生する費用とに分けられると思いますが、日常的に発生する費用については問題なく経費にできます。
一方、臨時的に発生する費用については少し確認が必要になる場合があります。

 

日常的に発生する費用

例えば、インターネット環境を整えるためのサーバーの購入や、社内のLAN工事など、初期費用や設置工事費用なんかが該当するでしょう。

もちろん金額によっては、減価償却の対象になってくるので、耐用年数に応じて数年間で経費にする必要はありますが、経費にできることに違いはありません。

他に、独自ドメイン取得のためのレンタルサーバーの契約や、サーバー機器の維持や保守料金、セキュリティ対策で導入するソフトの費用なんかもここに含まれますね。

 

臨時的に発生する費用

社内のパソコンや、サーバーがウイルスに感染した場合の復旧費用であったり、サイバー攻撃を受けて情報漏洩したことにより損害賠償請求された場合の賠償金の支払いなどがここに含まれます。

これらに共通していえるのは、社内のパソコンやサーバー内のデータの普及や修復、個人情報などの顧客情報が外部へ流出したことによる賠償ということなので、いずれも事業をおこなうことで被害にあったとみることができると思います。
原因と結果の因果関係が少なからず影響することもあるでしょうが、基本的に事業遂行上不可避であって、ウイルス感染などの事故にあってしまったようなこれらの復旧費用は、経費性が疑われる余地はありません。

 

経費性が疑われる臨時的に発生する費用とは?

では、同じく臨時的に発生する費用でも、誹謗中傷する書き込みやネガティブ記事を削除するために支払うものはどうでしょうか?

経費になるんじゃないの?って思いますよね。わたしもそう思います。

では、もう少し詳しく内容を確認します。

冒頭の裁決事例でも、ここが争点になったんですが、請求人は医師で、どうやら自身が医業停止処分を受けたことを記載した記事を削除した費用だったようなんです。
どういった経緯で医業停止処分を受けたのかわかりませんが、審判所では、事業に関するものではなく、個人(パーソナリティ)の問題と判断したようなんです。

要するに、誹謗中傷やネガティブ記事の矛先が経営している病院に向いているのではなく、あなた自身に向いていたのでは?という指摘です。

理屈はなんとなく、わからないでもないなぁという感じですよね。
ただ、この医師の場合もそうですが、フリーランスや個人事業主は家事関連費といって、事業用とプライベートが混在している経費があります。

次に、フリーランスや個人事業主、そして会社の場合はどうすれば経費にできるのか考えたいと思います。

 

誹謗中傷記事などの削除費用を経費にするためには?

経費性のポイントは、削除しようとしている誹謗中傷記事や、ネガティブ記事の矛先がどこに向いているのかです。

この経費性のポイントを押さえたうえで、フリーランスや個人事業主の場合は、家事関連費に、法人(企業)の場合は、誹謗中傷記事や、ネガティブ記事の内容をよく確認しなければなりません。

 

フリーランスや個人事業主の場合

非常に線引きが難しいと思います。家事関連費がからんでくるので、誹謗中傷記事や、ネガティブ記事の内容をよく確認して、経費計上の割合を合理的に計算、証明できるように準備しておく必要があります。

例えば、削除しようとしている記事の内容が、サービスや品質など直接的に事業に関するものであって、それが一方的で、不当な扱いを受けたことにより業績が悪化したために削除を依頼したという場合は、経費性が疑われることなく家事関連費に関しても考慮する必要はないと考えます。

しかし、誹謗中傷記事や、ネガティブ記事の内容が、どちらかというと個人の趣味嗜好、考えに関するもので、たとえ氏名や職業などが特定できるようなことであっても、直接的に事業との関連性が薄いような場合は、その経費性が弱くなってしまうことを認識しておかなければなりません。

結局のところ、経費計上の割合は誰にも正解がわかりません。そこは自身に委ねられます。
ただし、その割合を計算した根拠となる、誹謗中傷記事を写真に残すことや、事業にこれだけ影響があったことを証明できる売上の減少率などの資料は必ず残しておいてください。

個人的に今回の裁決事例に目を通す限り、フリーランスや個人事業主の場合、誹謗中傷への対応費用のうち、経費にできなかった個人の部分については、事業上の経費とは切り離して、名誉棄損や損害賠償の世界になってくるのかなと思いました。

 

法人(企業)の場合

この場合も、誹謗中傷の矛先が会社だけであれば経費性が疑われることはありません。

しかし法人の場合は、家事関連費という考えはありませんので、誹謗中傷記事や、ネガティブ記事の内容に一部、役員、従業員個人へ向いていたとしても、その対応費用を会社が負担することは難しいでしょう。

例えば、社員がなんらかの犯罪を犯したときにインターネットで「○○会社社員が…」との記事を削除するための費用は、経費にすることが難しいということです。
会社にとってはイメージダウンですが、事業との関連性は極めて低いので経費とする理由が見つかりません。

この場合は、会社の経費にするのではなく、犯罪を犯した社員に削除費用を請求する、損害賠償請求するというのが本筋かなと考えます。

 

まとめ

個人的にもなんとなく納得いくような、いかないようなモヤモヤしたような感じではあります。

税務弘報でも、執筆者の方は審判所の考えに疑義を呈しています。

わたしもホームページやブログを運営している身なので、いつ何時このような事態が起こるかわかりません。

まずは、誹謗中傷されないよう努めますが、万が一の場合は対応を考えておかないといけないかなと思いました。

 

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