会社の税金

会社の慰安旅行は福利厚生費?交際費?

2019年10月25日

基礎的なものほど、何かのきっかけで勘違いして、その後、記憶が修正され、「あれ、そうやったっけ?」となることがよくあります。

交際費もその一つだと思います。

 

例えば、皆様よくご存じの、飲食代一人当たり5,000円までは交際費から除ける「5,000円基準」。

これは、社外の人間が入っている場合にのみ使える基準です。

社内(役員、従業員、これらの親族)の人間だけでの飲食代は金額基準なしに交際費です。

 

我々が多くお付き合いする中小企業については、通常一年当たり800万円までは損金算入ができるので、たとえ科目を間違えていたとしても問題になることは少ないかもしれません。

ただし、交際費が800万円超えている企業や大法人の場合は、交際費の範囲について理解しておく必要があるので、要注意です。

 

交際費の質問の中でも圧倒的に多いのが、「飲食代」と「慰安旅行」について。

飲食代は会議費か交際費か、慰安旅行は福利厚生費か交際費かで迷うケースです。

飲食代は上記内容と、他に飲食年月日、参加者とその人数、飲食場所などを領収書等に記載して保存する点に注意してもらえれば大丈夫です。

 

一方、慰安旅行(従業員への慰安について)少し注意が必要なので、今回は慰安旅行に焦点を当てて解説していきたいと思います。

 

交際費の範囲

まず、税法上、交際費は下記のとおり定義されています。

 

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出する費用をいいます。

国税庁HP No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算

 

そして、但し書きとして、『専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用 』 は交際費から除かれて、福利厚生費になるとされています。

 

しかし、慰安旅行は福利厚生費でOK!終わり!とはなりません。

 

慰安旅行の注意点

この慰安旅行の範囲は、所得税の基本通達で明らかにされています。

 

慰安旅行を福利厚生費にして良い場合

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること(海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内)
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること

 

2つの条件を満たして、かつ、役員だけ、取引先に対しての接待、私的ではない旅行費用に限り、慰安旅行になります。

また、所得税の通達が出てくるにはある理由があります。

 

条件を満たさなかった場合

例えば、旅行の期間が5泊6日になった場合は、慰安旅行としての範囲を超えているので、従業員への給与と認定され、課税されます。

要は、慰安旅行の範囲を超えた旅行をしてしまうと、従業員への現物給与を支給したと考えられてしまいます。

 

少額不追及の趣旨

また、面倒なことに金額基準もあります。

 

元々、従業員に供与する少額の現物給与(経済的な利益の供与)は、強いて課税しないという少額不追及というものがあります。

この少額の範囲ですが、法律で定められているわけではありませんが、参考にできる基準があります。

 

少額不追及の範囲

国税庁HPの事例を参考にすると、会社負担の旅費10万円ぐらいであれば、少額不追及の範囲のようです。

 

[事例2]
イ 旅行期間     4泊5日
ロ 費用及び負担状況 旅行費用25万円(内使用者負担10万円)
ハ 参加割合     100%

旅行期間・参加割合の要件及び少額不追及の趣旨のいずれも満たすと認められることから原則として課税しなくてもよい

No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

 

過去の2つの判例もチェックしてみましょう。

 

福岡地裁平成29年4月25日判決

従業員等を対象とした宴会費用(総額2,000万円超で、一人当たり28,000円程度)について、慰安目的行事として、交際費等には当たらないとされた事例。

この場合、宴会費用総額で見ると高額ですが、日帰り慰安旅行と比較すれば、一人当たり28,000円程度は通常要するものであること、また、従業員の参加率は70%超であることから、福利厚生費処理が認められました。

 

東京地裁平成24年12月25日判決

一人当たり約24万円の慰安旅行は現物給与(経済的な利益の供与)に当たるとされた事例。

この事例で少額不追及の範囲について参考にしたのが、官公庁及び民間企業からの依頼により賃金、労務管理、労働問題、経営管理等に関する各種調査研究の受託業務等を行っている法人の会員企業へのアンケート調査から導きだした海外旅行費用平均額及び会社負担金額でした。

そのアンケートによると、海外旅行費用平均額が81,154円、そのうち56,889円を会社負担としていたので、約24万円は少額不追及の範囲を超えるものと判断されました。

 

まとめ

慰安旅行が福利厚生費になる要件を解説しました。

判例では少額不追及の範囲が低く設定されていましたが、判例での範囲を超えたからといって直ちに現物給与とはならず、一定の許容範囲があると考えられます。

結論的には、国税庁HPでも示しているとおり、4泊5日で、参加率が50%以上(参加しなかった人には金銭を支給しない)で会社負担額は10万円以内であれば、福利厚生費として処理して問題ないでしょう。

 

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