雑感

もしかすると最低資本金制度は必要なのかもしれない

2020年1月10日

この前、ある税理士仲間と飲んでいた時の会話で、「未収」の話になりました。

ちなみに、アイキャッチ画像はその時に〆で食べたラーメン。
魚介系であっさりしていて、お酒を飲んだ後には良かったです。

そのときのラーメン屋はこちら

 

さて、実務的に会計科目としては「未収」は、「売掛金」と同じように使われている会社もあります。

「売掛金」は商品やサービスを提供して、代金を受取るまでに使われる科目で、お互いの信用があって成立する取引ですよね。
また、資金繰りの考え方としては、代金を回収できるまでのあいだ、取引先にお金を貸している「貸付金」的な性格であるともされます。
「買掛金」はその逆で、商品やサービスの提供を受けて、代金を相手方に支払うまでのあいだ、その代金を自由にさせてもらっている、「借入金」的な性格であるともされます。

では、「未収」とは。
「未収」も商品やサービスを提供して、代金を受取るまでに使われる科目と一般的には使われています。例えば診療報酬などについては、「売掛金」という科目よりも「未収金」がしっくりくるのではないでしょうか。

ここまでは、あくまで会計、簿記の話です。

しかし、ビジネス上では「未収」と「売掛金」は似て非なるものです。

これはどこの業界でも同じだと思いますが、「未収」は回収困難な債権という意味合いで使われていることが多いでしょう。

現実的に使う「未収」は回収不能債権を意味します。

冒頭の税理士仲間との会話で登場した「未収」も回収不能債権のことです。

 

どの業界でも「未収」が増えているらしい

税金の話をすると、正しくは、「未納」と表現するべきでしょうか。

これは最近テレビでもよくやっていますよね。
国税や住民税、社会保険料などの滞納者に対して、事前調査をおこなって、資力があるにもかかわらず納付しない悪質な人に徴収部門の方たちが突撃し、押し問答する感じのもの。

大抵、滞納者の訳の分からない理屈が放送されて、「世の中少なくともこんな人が本当にいるねんな~」と思わされます。

そして、住民税については、未収問題をきっかけに、自治体によっては特別徴収(事業者が支給する給与から天引きして納付させること)に力をいれるところも増えてきました。
大体、普通徴収(納税者に納付書を送付し、4回に分けて納付すること)は一年分の税金を4回に分けて納付するので、1回あたりの金額が大きくなります。
そら、納付しなければいけないのでしていますが、正直キツイと思います。これは制度上の問題で少し考えないといけないところなのかもしれません。

深刻なのは医療業界らしいですね。

営利目的をしている法人や個人事業主は、通常、未収が発生すると、その方とは今後お付き合いしませんよね。
でも、医療業界は、医師法によってこういったことができません。

 

診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

医師法第19条

 

ちなみに、この「正当な理由」には昭和24年9月の行政解釈として、「医業報酬が不払であっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできない」と示されているようです。

これって何とも言えないですよね。
当時は貧困層救済の意味も含めて示されたことなんでしょうが、今は、先ほどの滞納者と同じように、「払えるけど払わない」という悪質な方々もいるのでしょう。

 

我々の業界での「未収」問題

長々と書いてきましたが、本題に入ります。

わたし自身の税理士事務所の話をすると、開業間もないこともあってか、幸い未収問題は今のところ起こっていません。

ですが、勤務していたときは結構ありました。

自動引き落としにしていれば、ある程度は防ぐことができるのかもしれませんが、まだまだ多くの事務所ではお客様に、お振込みで対応していただくことが多いのではないでしょうか。

そんな時、どうしても我々に対する報酬というのは感覚的には、お支払いを後回しにされる傾向にあります。極端な話、顧問契約が切れても、それほど困らないのでは?とか、多少融通が利くと考える方が多いのではないかと思っています。

例えば、給与を支払わなかったら従業員さんは出勤しませんよね。家賃を払わなかったら退去させられます。仕入代金を払わなかった商品が扱えず、売上が上がりません。

でも、申告してもらった後に代金を払わなくても申告は済んでいますから困りません。関係が切れたとしても次を探せば良いわけです。

 

最低資本金制度が担っていた役割

平成18年から会社法が導入され、最低資本金制度がなくなりました。

この最低資本金制度の趣旨は、内部や外部の利害関係者の保護、社会的信用力を担保することが大きな目的だったわけです。
それと、最低資本金制度は株式会社であれば1,000万円、有限会社であれば300万円でしたが、このお金を集めてくる、または貯めることで、これから行おうとする事業への本気度を試す役割も担っていたのではないかと、わたしは思っています。

金融機関から創業融資を受ける際、自己資金要件がありますが、これって正しく最低資本金制度の名残りですよね。

でも、現行の制度では資本金は1円で設立可能です。容易に誰でも会社を作れるようになったわけです。

冒頭の税理士仲間も言っていましたが、未収問題や滞納問題を引き起こす方(どうしても払えない場合は仕方ないと思います)に関しては、本気でビジネスを考えていないのではないかと思います。

わたしは、今後、税理士事務所を運営していくことで、いつかこの問題が起こるかもしれません。その時の対応はすでに決めています。そういった本気でビジネスを考えていない責任感のない方々とはお付き合いもしたくありませんので、迷わず、解約をさせていただくつもりでいます。(どうしても払えない方に関しては悩ましいところですが・・・)

時間も勿体ないですからね。

 

まとめ

モノを売る商売だと、「未収」って起こりにくいのかもしれませんが、役務の提供をサービスの主軸としている場合、「未収」が起こりやすいのかもしれません。

モノを手にしながら代金を払わないというのは普通の感覚ではできませんが、役務の提供って目に見えにくいため、サービスを受けたという感覚が薄く、代金を気持ちよく払うというのが躊躇われる(少し高いなと思ったり)のかもしれません。

でも少し高いな、サービス内容と料金が見合わないなという場合は、相手方にサービス内容を再度確認し、高い安いを判断すべきであって、「払わない」という選択肢は無いのではないでしょうか。
でも、残念ながら「払わない」を選択してしまう方というのも少数存在しています。

今回は非常にネガティブな記事になってしまったので、公開しようかどうか悩みましたが、一つの考え方として、最低資本金制度ってビジネスの障害になりつつも、利害関係者にとっては良い制度だったのかなと思ったので、公開することにしました。

読まれた方がどういった感想を持つかわかりませんが…

結局のところ、「会社、ビジネスをする以上、ちゃんとしよや」ということが言いたいのでした笑

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