今回は、外注費を利用して所得分散をおこなう節税手法について、前提となる注意点をまとめようと思います。
これは一般的になり過ぎているからか、めちゃくちゃしている場合が結構多いです笑
例えば、所得分散の視点でいえば、我々の業界では、会計法人を使った手法があります。医療業界であればMS(メディカルサービス)法人、不動産賃貸業であれば不動産管理会社。
また、今回は言及しませんが、外注費は消費税の視点でも節税目的で使われます。
たまに新聞でも消費税法違反で捕まったりしていますが、外注費がらみの事件は大抵、手法が同じです。
消費税を計算する上で給与などの人件費は経費としません。それを法人設立時の消費税免税制度を利用して、人材派遣会社的なハコを作り、人件費を外注費に仕立て上げて、所得分散と消費税両面で節税を図るというもの。
こんな感じで一見使い勝手が良さそうな外注費ですが、税務調査では必ずチェックされますし、業務、契約内容や請求書発行の有無、タイムカードの有無、報酬の計算の仕方などかなり細かく確認されます。
また、相手方へ確定申告をしているかどうか、契約実態の聞き取りも普通におこないます。
なのに、みなさん結構やりたい放題している。
そんな方々にとって、今回は外注費、業務委託契約の前提を再確認する意味で読み進めて頂ければと思います。
外注費を使った節税とは?
すでにやってるよ、知っているよ、という方は読み飛ばしてもらって結構ですが、ご存知でない方のために一般的な事例を説明しておきます。
例えば、上記した不動産賃貸業の場合の不動産管理会社を利用した取引関係図はこんな感じです。
なお、不動産オーナーを節税の主役に考え、不動産管理会社には他に従業員はいません。
不動産オーナーは、自身で保有する物件の維持管理や賃貸借契約管理、賃料の徴収業務などを同族会社である不動産管理会社に業務委託します。
すると、業務委託分の外注費である経費が発生しますので、自分の所得(利益)を減らすことができ、かつ、そのお金が、ファミリー企業である不動産管理会社に渡ります。
結果的にお金が“外部”に流れず節税が図れることになります。
不動産管理会社が、きちんとした管理サービスをおこなっていることを前提として(全くできていない、していない場合も散見されますが…)取引関係図を見ておかしなところはありませんよね?
これが本来のあるべき姿なんです。
では、たまに見かける、ちょっと勘違いした危ない事例を紹介していきます。
なんか変な外注費取引
さて、下記の図を見てみなさんはどう判断されますか?
この場合も上記図と同じように不動産管理会社には従業員はいません。
客観的に見て不動産管理会社を通すことに、経済合理性は見つけられませんよね?
この場合、当然、税務調査で問題になります。
裁判例がありますので、確認していきます。
判例での外注費のポイント
外注費について参考になる、ある裁判例(大阪高判平成30年11月2日平成30年(行コ)第59号)があります。
これは、個人事業を営む納税者が、自身が代表を務める会社へ支払った外注費について、その経費性が争われた事例です。
簡単にまとめると燃料小売業を営む納税者が、自身が代表を務める会社へ、配達販売等に関する業務委託をおこない、その委託料である外注費の経費性が争われました。
営む商売は違えど、「なんか変な外注費取引」の図と同じです。
ポイント:本当にその取引は必要なのか
更正処分取消してくれや!
そもそも論ですよね。
確かに仕事は実際に納税者自身が配達販売等をおこなっていました。ただ、裁判所はその納税者がおこなっていた仕事は、社会通念上、会社を通す必要性がないと判断したんです。
確かにそうですよね。
もし自身が代表を務める会社であっても、自身以外の親族、外部従業員がその業務を担うのであれば裁判所の判断も異なってくるかもしれませんが、この場合は無理がありますよね。
なお、この場合でも会社を設立した理由(会社組織にしないと信用上、従業員の採用がうまくいかないためなど)と業務委託契約の必要性(自分では身体がしんどいので若い子に任せたかったなど)を証明できれば良かったのかもしれません。
まとめ
冒頭でも触れたとおり、我々の業界でもこういった節税がおこなわれていますが、たまに同業者でも、「本当にその取引は必要なのか」という前提が抜けている方がいらっしゃいます。
昔から使われている手法ほど、基本的な前提条件を見直してみてはいかがでしょうか。