会社の税金

社宅を使った節税【役員からの受取家賃は、支払った家賃の半分でいい?】

2019年12月25日

社宅を使った節税は一般的で、結構みなさんやっていますよね。

会社が役員の自宅を社宅とするだけで、こういった効果が期待できます。

 

社宅を使った節税の効果

  • 会社では家賃という経費が増えるので、法人税の負担が減少する
  • 会社で負担が増えた家賃分の役員報酬を下げても、いまより役員の手取りが増えることがある
  • 役員の所得税、住民税、社会保険料を減らすことができる

 

良いことしかありませんよね。

家賃や役員報酬という、実際に出ていくお金は変わらなくても、このような節税効果が期待できるんです。

このような効果を最大限発揮させるポイントや注意点がありますので、このあたりについてお話ししたいと思います。

 

また、社宅の節税で、役員から受取る賃料計算を適当にしてしまうことで、節税効果を減殺しているケースがほんとうに多いんです。

最近社宅の節税を始めた方はちゃんと賃料計算をしているかと思いますが、ざっくり、支払った家賃の半分で計算しているというパターンの方も多いのではないでしょうか。

計算が面倒なので、「ざっくり半分でいっといて」と伝えている同業者の方も多そうです。

ざっくり半分で賃料設定をしている会社は、本来受けられるべき社宅の節税効果を得られていないケースが多いんです。

このあたりも含めてお話ししていきますので、御社の社宅節税に活用してみてください。

 

社宅を使った節税が失敗していることが多い!?

まず、社宅を使った節税の概要を、簡単に確認しようと思います。

あくまで「社宅」ですので、賃貸借契約は、会社と不動産オーナーとのあいだで行います。

そして、会社が社宅の賃料を全額不動産オーナーへ支払い、役員からは社宅使用料として賃料を徴収するといった流れになります。

 

社宅を使った節税の概要

社宅を使った節税の概要図は下記のようなかんじ。

会社が不動産オーナーに払う賃料と、役員が会社に払う賃料との差が生じることで節税効果が期待できます。

同額だったら意味がありません。

では、会社側の具体的な節税効果をみてみます。

 

月額賃料14万円の社宅を不動産オーナーとの間で賃貸借契約、役員にはその半額で貸与した場合

 

 

賃貸借契約を締結した会社と、それを会社から貸与する役員それぞれの立場ではどうなっているかを確認していきたいと思います。

 

会社ではどうなる?

月額賃料14万円の社宅を不動産オーナーとの間で賃貸借契約した場合、毎月の賃料14万円の1年分である168万円が経費になります。

次に、この社宅を役員に貸与し、賃料を半分の7万円に設定すると、1年分の84万円が収益として計上されますよね。

結果として、課税所得が84万円(168万円-84万円)減少することになります。

 

賃貸借契約を締結した会社側ではこのようなかんじでしょうか。

続いて、社宅の貸与を受ける役員での効果について。

 

役員ではどうなる?

通常、自宅の家賃はもらった給与から支払いますよね。

つまり、社会保険や所得税など課税された後の手取りから支払うこととなります。

それが実際の賃料は14万円であるにもかかわらず、7万円の賃料で住めることになるので、その1年分の差額84万円の手取り額が増えるということになります。

役員が支払う賃料が低ければ低いほど節税効果が期待できるということ。

ですが、低すぎると給与課税されてしまいますので注意が必要です。

 

このケースでは、実際に会社から出ていくお金が増えていますよね?

増えた賃料負担分だけ役員報酬を下げると、実際に会社から出ていくお金は変えないこともできます。

 

増えた賃料負担分だけ役員報酬を下げた場合の節税効果

ここで30歳のひとり社長の試算をしてみたいと思います。

社宅の節税をしないパターン、社宅の節税をしたパターン、増えた賃料負担分の7万円の役員報酬を下げて社宅の節税をしたパターン、この3つを確認してみます。

 

  年収720万円 年収636万円
①通常 ②社宅の節税を利用 ③社宅の節税を利用
社会保険料 110万円 110万円 91万円
所得税・住民税 71万円 71万円 56万円
賃料負担額  168万円 84万円 84万円
手取り額 371万円 455万円 405万円

 

手取り額で一番得しているのは、役員報酬も下げず社宅の節税を利用した場合です。

本来は個人で負担すべき自宅の賃料を会社でも経費に落としつつ、個人でも得できるというパターン。

会社でもある程度利益がでていて、キャッシュにも余裕がある会社は、②のパターンなんかが良いのかなと。

 

そんなにキャッシュに余裕がないんだよ

って場合、役員報酬を調整することで、実際に会社から出ていくお金を変えないパターンが良いのではないでしょうか。

①と③を比べてください。

個人では年収が減っていますが、年間34万円も手取り額が増えることになります。会社では実際に出ていくお金は変わらないのにです。

ただし、③のパターンは社会保険料が減ることになるので、会社の所得金額は増えます。

節税はしたいけど、それほどキャッシュに余裕もないんだよなって会社は③のパターンが良いのではないでしょうか。

 

上記のパターンは、賃料負担額をざっくり半分にしました。

ですが、社宅を使った節税効果を最大限発揮させるポイントは、賃料負担額です。

要するに、社宅を使った節税は、実際の賃料と役員から受取る賃料の差額が大きければ大きいほど効果が生まれることになるので、受取賃料を最小化することが重要です。

では、その賃料計算に話を移します。

 

具体的な賃料の計算方法

まず賃料の計算方法は、その社宅が小規模であるか、小規模でないかで異なります。

 

小規模な住宅の賃料計算方法

小規模な社宅については、下記のような基準があります。

 

小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅をいいます。

国税庁ホームページ No.2600 役員に社宅などを貸したとき

 

法定耐用年数30年以下の建物とは、木造の一戸建てなんかが該当します。

また、法定耐用年数30年を超える建物とは、鉄筋コンクリート造のマンションが該当します。

 

早く言えやって感じですが、このブログで本当に伝えたいのはここから。

計算方法は下記のとおり、「固定資産税の課税標準額」がベースになっています。

 

小規模な住宅の賃料計算

①から③の合計額を賃料として受け取っていればOK

①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))

③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

ここで問題になるのが、固定資産税の課税標準額って所有者しか情報を取れないのでは?

確かに昔はそうでしたが、いまは賃借人であれば情報が取れます。

昔は固定資産税の課税標準額がわからなかったこともあって、支払う家賃の半分を役員からの受取り賃料としていたんです。

念のため、賃借人であれば固定資産台帳を確認できるという関係法令を貼り付けておくので、興味のある方はご確認ください。

 

市町村長は、第二十条の十の規定によるもののほか、政令で定める者の請求があつたときは、これらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関して固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものについての証明書を交付しなければならない。

地方税法第三百八十二条の三

 

法第三百八十二条の三に規定する政令で定める者は、次の表の上欄に掲げる者とし、同条に規定するこれらの者に係る固定資産として政令で定めるものは、同表の上欄に掲げる者について、それぞれ同表の中欄に掲げる固定資産とし、同条に規定する固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものは、同表の上欄に掲げる者について、それぞれ同表の下欄に掲げる事項とする。

一 土地について賃借権その他の使用又は収益を目的とする権利(対価が支払われるものに限る。)を有する者

当該権利の目的である土地

法に規定するすべての登録事項

二 家屋について賃借権その他の使用又は収益を目的とする権利(対価が支払われるものに限る。)を有する者

当該権利の目的である家屋及びその敷地である土地

法に規定するすべての登録事項

地方税法施行令第五十二条の十五一部抜粋

 

小規模な住宅でない場合の賃料計算方法

小規模な住宅でない賃料計算

  1. 自社所有の社宅の場合
    ①と②の合計額の12分の1を賃料として受け取っていればOK

    ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
    ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%

    ②(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%

  2. 他から借り受けた住宅等を貸与する場合
    会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記1で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額

 

小規模な住宅でない住宅とは、木造の一戸建てで132㎡(40坪)超、木造以外(鉄筋コンクリート造のマンションなど)だと99㎡(30坪)超の住宅なんかが該当します。

なお、住宅が大きくなればなるほど、賃料相当額も高くなっていくので、節税効果は小規模な住宅ほど期待できません。

 

小規模な住宅で、実際に賃料計算した場合の効果

実際に不動産オーナーに支払っている賃料と、固定資産税の課税標準額をベースに計算した賃料では、結構な差が生じることが多いです。

計算方法を確認していただくとわかるように、小規模な社宅であると、実際の支払賃料の半分と比較する必要すらありません。

それを実務的には、固定資産税の課税標準額がわからない、手間がかかることを理由に、ざっくり半分でやっているケースが多く見受けられます。

 

ある書籍に載っていた事例では、会社が不動産オーナーに支払っていた賃料が約25万円、貸与を受ける役員が負担していた賃料が半分の13万円としていたところ、固定資産税の課税標準額をベースに計算した賃料は、たったの3万円だったようです。

この場合どうなっていたかというと、会社では一年あたり120万円も余分に利益が上がっていたことになり、役員個人では一年あたり120万円も手取り額が減っていたことになります。

めちゃくちゃ大きくないですか?

数年続いていたら、いくら損するんでしょうか…

社宅での節税をしている会社、役員さんは是非、賃料の再計算をおすすめします。

 

社宅を使った節税の注意点

さて、良いことばかりの社宅を使った節税ですが、注意点もあります。

 

社宅を使った節税の注意点

  • 社宅は小規模な住宅にすること
  • 実際の賃料と受取る賃料の差が大きければ大きいほど節税効果大
  • フリーランスや個人事業主は不可

 

このあたりの注意点についてお話していきます。

 

社宅は小規模な住宅にすること

理由は、受取賃料が最も少なくなる計算式だからです。

役員に貸与する社宅は何でもOKというものではありません。

床面積が240平方メートルを超えるものや、役員個人の趣味嗜好を反映したような、豪華社宅については、節税効果は期待できません。

また、役員が自身の持ち家に住んでいる場合は、社宅を使った節税は使えません。

この場合、会社がその自宅を役員から買い取って、貸与する必要があります。

 

実際の賃料と受取る賃料の差が大きければ大きいほど節税効果大

大きな節税効果を期待するなら、新築物件よりも中古物件の方が固定資産税の課税標準額は低くなるので、算定する受取賃料も少なくなり、節税効果が期待できます。

また、建物に関しては一般的にマンションよりも木造一戸建ての方が耐用年数が短いので、固定資産税の課税標準額は低くなる特徴があります。

なので、不動産オーナーに支払う賃料が割と高く、かつ、40坪以下の中古の木造一戸建に住んでいる方は、受取賃料の計算をしてみては?

思ってもみなかった節税効果があるのかもしれません。

 

フリーランスや個人事業主は不可

残念ながら、フリーランスや個人事業主の方は、この社宅を使った節税は使えません。

ただし、雇っている従業員さんには使えます。

従業員さんに社宅や寮などを貸与したときには、すこしだけ取扱いが異なりますので、こちらをご確認ください。

 

まとめ

一般的に有名な社宅の節税で、見落としがちなところをまとめてみました。

今回のブログのポイントは、役員への賃料計算は固定資産税の課税標準額から計算すること。

そうすることで、大きな節税効果が期待できます。

受取り賃料の最小化を図れるということは、社宅を使った節税の最大の効果を得られるということ。

支払賃料の半分に設定している会社が多いので、一度見直してみてください。

見直すだけの価値はあると思います。

これから使ってみようという方にも参考にしていただければと思います。

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