前回まで、業種、契約内容に応じた収益の計上時期についてまとめましたが、まだまだ他の業種、特性に応じた収益計上のルールや認められている方法というものが法人税(法律ではなく、通達)にはあります。
誰もが理解できることでしょうが、売上は、税務調査での調査項目で最も重点が置かれています。
その売上について、会社の収益計上ルールにブレがなく、しっかりした処理ができていれば、税務署側に「ちゃんとしている会社」という印象を与え、結果的に節税につながります。
印象というのは本当に大事です。悪ければ何から何まで指摘事項を掴まれ、税務署が有利に調査を進めることになるからです。
たまに、当期の売上を無理やり翌期にするような処理をする方がいらっしゃいます。
売上を除外するといった脱税行為でない限り、当期か翌期のどちらかに計上、課税されるという話なので、効果的な節税ではなく、単に資金繰りが一年楽になる程度のものです。
合理的な理由があればやるべきですが、理由もなく当期の売上を無理やり翌期にするコスト(時間)や、ボロが出て修正申告をするかもしれないコスト(申告報酬)面も考えるべきだと思います。
さて、今回はその税務調査で、重点が置かれる売上項目について、必ず見られる資料と注意点をまとめたいと思います。
これから税務調査という方、収益計上時期を変更しようかなという方、ちょっと売上を繰延べてしまったという方、色々だと思いますが、是非チェックしてみてください!
基本的なこと
税務調査が始まると、簡単な挨拶、事業内容などの聞き取りがあった後、とりあえずという感じで、売上に関する資料を要求されます。
流れとしては、まず、売上の調査からスタートする場合がほとんどです。(ほぼ100%)
ですので、会社が経理した総勘定元帳、請求書、社内稟議書などの内部資料、契約書などの外部資料を確認し、整合性や妥当性のチェックは、忘れず真っ先にしておきましょう。
整合性や妥当性のチェックの際、本店、支店、工場などの複数の事業所がある場合、それぞれの事業所で保管する資料間の差異の有無も要チェックです。
あと、その当時なにかしら問題があったのか、付箋を貼っていることが多い!
そのまま税務署に資料として開示すると、「問題があったここを見て」とアピールしているようなものなので、絶対にはがしておいてください。
整合性や妥当性のチェック
資料をチェックするといっても、何のどこを見れば良いかわかりませんよね。
税務調査で確認される売上資料は、会社ごとに受注から代金回収までに登場する内部資料はすべて見られると思ってください。
具体的に、受注から代金回収までの一般的な資料としては、受注表、仕入注文書や製造指図書、納品書、請求書、領収書などといった感じでしょう。
後述しますが、仕入注文書や製造指図書は仕入や棚卸資産にも影響してくるところです。
例えば、常に受注が入ってから仕入をおこなっている会社が、ある売上を翌期にしたいがために、後から受注表と請求書を改ざんしても、仕入注文書や納品書、運送会社に依頼した運賃請求書や自社の運転記録簿などまでは、なかなか整合性はとれないでしょう。
売上の繰延べ方法のヒントを解説しているのではありません笑
整合性や妥当性のチェックをすることで、事前に受けるであろう質問の準備をしておく意味でも重要です。
受注から代金回収までの流れで、種類や数量、金額に変更があったり、キャンセルになったりと色々あるでしょう。そこでの経緯の説明や事情を把握しておき、辻褄が合わないところ、誤解を与えるところはないか改めて確認しておくことが重要です。
売上と売上原価との関連は大丈夫?
税務調査での売上調査は、決算翌月以降、数ヶ月まで追いかけられます。
それは、決算を終えて急に受注が増えていたり、売上が増えていたりと、おかしなことが起きていないことをチェックするのが一つ。
もう一つは売上と直接的な経費である売上原価との関連性をチェックするためです。
このチェックの時には併せて棚卸資産在庫も確認を受けますので、納品書などから仕入在庫、出荷日、引き渡しの日まで追いかけられます。
また、売上に関連して負担する設置工事費や、運送費、保険料などの販売手数料については、基本的に売上と同じ事業年度に計上しなければなりません。
収益計上基準を変更した場合
収益計上基準を変更した場合は、どういった理由があれ、結果的には売上が繰延べられることになります。売上が繰延べられるということは、当期の課税される利益が少なくなっているということなので、収益計上基準を変更した合理的な理由を説明できるようにしておいてください。
合理的な理由がない、説明できても筋が通っていない場合は、売上計上漏れの指摘を受ける可能性が高くなります。
適正な販売価格か
まれに、決算期までに商品の引き渡しが済んでおり、売買が成立しているが、申告期限までに売上代金が確定しない場合があります。この時は売上を見積もって計上することになりますが、適当な金額ではダメです。
相手方に提示した見積書や過去の販売実績に応じて計上しなければなりません。
また、国内での第三者間取引についての利益率などについては、不正をしていない限り、質問を受けることはありませんが、グループ関連企業に著しく安い金額での販売をおこなっていると、寄付金など思わぬ指摘を受ける可能性もあります。
まとめ
税務調査で必ず見られる売上資料は、受注から代金回収までに登場する内部資料と関連する外部資料です。そこから、仕入や棚卸資産、販売手数料…と色々派生していきます。
会社によって、受注から代金回収までに登場する内部資料は様々です。
いつかおこなわれるであろう税務調査の準備、対策をしておくことで、収益計上基準の見直しなど今まで何とも思わなかった問題や、色々な気付きがあるかもしれません。
そしてそれが結果的に会社を不要な納税リスクから身を守る防衛手段になるのではないでしょうか。