今回は、あまりなれない方からすると、結構やってしまいがちな融資要件の誤った解釈を取り上げます。
わたし個人としては、今回の事例は、誤った解釈までとは思っていませんが、金融機関での解釈は異なっているというものです。
見解の相違というべきなんでしょうか。
ただ、金融機関との見解の相違は、税務調査の場合とは違います。
税務調査での見解の相違は、お互いの意見をぶつけ合って、議論し、妥協するところを探っていくようなネゴシエーションの色合いが強いですが、金融機関との見解の相違は、最悪「貸せない。以上!」ですからね。
余談ですが、税務調査の際、税務署の言いなりの先生も割と多い気がします。
色々なところで勤務していましたが、事務所によって、先生によって、考え方は様々。
わたしも務めていた先で、なんかカッコ悪いなぁと思った記憶も正直あります。
わたしの思う、カッコ悪いというのは、「税務署に睨まれたら・・・」とか変な理屈で、最初から議論もしない、意見も言わない、税務署の指摘が正しいと思い込み、疑うことをしないので、結果的にお客様を説得するという笑
ただ、お客様には決して誤解しないでいただきたいのは、全部が全部戦えるわけではないということ。ここ重要です。時と場合によっては、お客様を説得することもあります。
それでも、戦えないことでも、お客様のために頭を下げる、変な話、最終的に「これだけは、堪忍してください。」と言えるか言えないか。
わたしは言える税理士の方が断然カッコイイと思いますし、自分もそうでありたいと思ってます。
話が逸れましたが、金融機関との見解の相違はなるべく避けるべきでしょう。
そのためには、「これぐらいはいけるやろと」自己都合で融資要件を解釈しないことが重要です。
創業融資の自己資金要件の誤った解釈
出店を計画し、創業融資を利用しようと考えた方の事例です。
その方は、日本政策金融公庫の創業融資要件である、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」という自己資金要件の証明として、創業融資申込時点で支払を済ませていた店舗保証金の領収書を提示したとのこと。
それが公庫担当者から、これでは自己資金要件の証明にはなりませんと言われたとのこと。
自己資金要件のポイント
自己資金要件の証明で領収書を提示する方が結構いらっしゃいますが、考えてみてください。
領収書は使いみちはわかっても、誰のお金が使われたかまではわかりません。極端な言い方をすると、盗んだお金で支払ったか、自分のお金で支払ったか、領収書だけでは判断できません。
その意味で、領収書では自己資金要件を証明することはできません。
自己資金要件のポイント
- 創業者自身が、コツコツと貯めてきた資金であるか、またはそのご家族から援助してもらった資金か(創業者のコツコツ資金が望ましい)
- ノンバンクなど短期的に調達してきた資金ではないか
- 用意した自己資金が、本当に事業に使われるか
概ね、上記3つが自己資金要件のポイントでしょう。
例えば、ご家族からの資金援助にしても、本当にご家族が貯めていたお金か、ご家族が借りてきた、盗んできたお金ではないという証拠の提示が必要になります。その際、ご家族の預金通帳を提示することで、自己資金要件の証明をします。
要するに、自己資金要件は、そのお金の支払いの証明ではなく、そのお金の出所が問われているんです。
自己資金要件での解決、説明方法
領収書を提示した場合、そのお金の出所もあわせて説明してください。
銀行振込にしろ、キャッシュにしろ、出所はご本人が一番よく分かっているはずです。その説明を公庫の担当者にエビデンスを用意して説明する必要があります。
知らず知らずのうちにコツコツ貯まっていったお金を自己資金としたい方は、数年分の預金通帳をエビデンスとして用意し、残高蓄積の証明と説明をしてください。また、ご家族からの資金提供の際は、ご家族の預金通帳を用意してください。
タンス預金(月々の預金引出から説明できればOKです)は残念ながら認めてくれないので、時間をかけて証明できるようにしましょう。その場合は一度に預金通帳に移さず、少しづつ生活費の余りを口座に移していたなど口実を作り、時間をかける必要があります。
まとめ
今回は、自己資金要件で誤った解釈をしてしまった事例を紹介しました。
この方は、ご自身が貯めていたお金が一部あり、ご家族からの資金提供がほとんどというケースでした。それぞれのエビデンスは上記のとおり用意して説明しましたが、ご家族からの資金提供については、返済の有無も確認しておく必要があります。
法人であれば、出資という形でOKですが、個人事業者の場合は、そのあたりが曖昧になりがちです。創業者自身は「ある時払いの催促なし」で実質貰ったものと解釈していても、ご家族からすると返してもらうことを前提に貸している場合がありますので、公庫担当者にもその旨説明ができれば良いかもしれません。
でも、やっぱり一番良いのは、コツコツ創業のために資金を用意している方でしょう。決して金額の多寡ではありません。
創業を考え、長期間に渡って計画的に準備を進めていることに、見えない堅実性のアピールができます。