財務基盤の安定しない中小零細企業は、借りられるときに借りられるだけ借りた方が良いと考えています。
資金を潤沢に持っておいた方が、心にダムを持った余裕ある経営ができるからです。
なので資金は無いより有った方が絶対に良いに決まっています。
資金を潤沢に持ち、将来起こりうる不測の事態に備えるのが良いと考えていますが、それは、借入金利息を負担するという犠牲のもとに成り立ちます。
現在、市場金利は低い状態が続いていますので、借入金利息は、「保険と割り切ってください」で理解していただくことが多いです。
ただし、今後、金利がどう変動するかわかりませんし、いくら保険と割り切っても、過度な金利の負担は避けるべきです。
今回は、借入金利息の考え方のなかでも、表面金利と実質金利の違いを中心にまとめようと思いますので、ご自身の会社ではどうなっているか確認してみてください。
また、この2つの借入金利息の考え方を知ることで、銀行との金利交渉でも必ず役立ちます。
無駄なお金を払わない、会社を守る意味でも、読み進めて頂ければと思います。
その借入金利息はいくらですか?
借入金利と言った方が良いのかもしれません。
借入金利はいくらですか?との質問で返ってくる利率は、銀行との約定金利を答える方がほとんどでしょう。
ここに落とし穴があるんです。
約定金利が単なる見せかけの金利になっている場合が往々にしてあります。
表面金利と実質金利の2つの借入金利息の考え方を理解する前に、借入金利息が変動する要素について少しだけお付き合いください。
借入金利息は、まず固定金利と変動金利で変わってくる
借入金利息って「借入金×利率」で計算されますよね。
今回は、この利率のお話なんですが、利率は固定金利と変動金利というものに分けられます。
固定金利とは
借入をする際、銀行とのあいだで金利を設定しますが、固定金利の場合は、ずっと利率が変わりません。
市場金利が上がろうが下がろうが、銀行とのあいだで取り決めた約定金利は変わらないので、メリットにもなりますし、デメリットにもなる可能性があります。
変動金利とは
固定金利の逆ですね。利率は金融情勢に影響を受けて変動するので、借入期間中金利が変動します。
市場金利が下がれば連動して借入返済額も少なくなりますが、市場金利が上がれば借入返済額が増えるので、メリットにもなりますし、デメリットにもなる可能性があります。
どちらがお得なのかは、将来の予測なので正直わかりません笑
このあたりは商売をしている方の肌感覚で予測する場合がほとんどなのかなというかんじですね。
多くの場合、先行きの見通しが良くないと予測して変動金利を選ばれることが多いような気がします。
借入金利息は返済方法でも変わってくる
聞いたことがあるかもしれませんが、元金均等返済と元利均等返済のお話です。
元金均等返済は、元金の返済額がずっと一定
説明より、イメージ図を見ていただいた方が分かりやすいのかもしれません。
元金均等返済は元金の返済が一定額なので、借入当初から返済金額が大きく、月々の返済額が変動することがデメリットとして挙げられます。
しかし、返済期間を通じた返済総額については、後述する元利均等返済よりも少なく済むことがメリットとなります。
元利均等返済は、毎月の返済額がずっと一定
これもイメージ図を見ていただいた方がわかりやすいかと。
元利均等返済は、毎月の返済額がずっと一定なので、資金繰り計画が立てやすいことと、元金均等返済に比べて借入当初からの返済金額が少なくなることがメリットでしょう。
しかし図を見ていただくとわかるように、当分のあいだ、毎月の返済金額のほとんどが利息で構成されているので、返済期間を通じた返済総額で比較すると、元金均等返済よりも返済総額が大きくなってしまうことがデメリットとして挙げられます。
表面金利とは銀行とのあいだで取り決めた約定金利
さて、これまでは借入金利息が変動する要素について確認してきました。
このあたりからは、すこし理論的な話になります。
まず、表面金利とは、借入金残高に対して支払う借入金利息の比率をいいます。
例えば、A銀行から4,000万円の借入があり、支払っている借入金利息が80万円であれば、表面金利は2%(支払利息80万円÷借入金4,000万円)となります。
この表面金利の2%は、銀行との間で交わされた契約である約定金利を意味します。
読んで字のごとく、表向きの金利ですね。
みなさんこの金利はハッキリ覚えています。
ですが、表があれば、裏もある・・・
実質金利をみてみましょう。
実質金利を知ると愕然とすることがある
実質金利とは、純額の借入金残高に対して支払う純額の借入金利息の比率をいいます。
純額がポイントです。
上記の例で、A銀行に2,000万円の定期預金がある場合、純額の借入残高は2,000万円(借入金4,000万円-定期預金2,000万円)となります。
一方、預金利息については定期預金にも僅かですが発生します。
金利0.1%であれば2万円の受取利息が発生しますので、純額の借入金利息は78万円(借入金利息80万円-受取利息2万円)となります。
結果、実質金利は3.9%(純額の借入金利息78万円÷純額の借入金残高2,000万円)となりますので、実質的には高い金利コストを払っていることになります。
これが、裏の実質金利です。
表面金利2%の低金利ですよと謳いつつ、銀行が手にしている実質金利は3.9%と倍ほどの開きが発生してしまっている場合もあるんですね。
実質金利を下げるためにはどうしたら良いのか
実質金利を下げ、過度な金利負担を避けるためには定期預金を借入返済に充当することも考えられますが、手元の資金が一気に無くなるので現実的ではありません。
資金繰りに余裕がない場合は、やはり保険と割り切るべきでしょう。
しかし、業績が良く、返済実績も十分な企業が、昔ながらの金利が適用されていることも珍しくありません。
実質金利が高すぎると感じるようであれば、「定期預金解約」を交渉のカードに使っても良いのではないでしょうか。
銀行は実質金利のことはあまり知られていないと思っています。
一度、笑い話程度に「〇%の利率やけど、実際はこれだけの金利を払っているから実質金利は○%やな!」ってジャブを打ってみてはいかがでしょうか。
それだけでも何か変わるかもしれません。
また、交渉する前に・・・
これまでの銀行との付き合いもあると思いますが、可能であれば日本政策金融公庫など低利の公的融資への借り換えを検討してみてください。
金利は不測の事態に備えるための保険と割り切っていても、毎月発生するものですので、資金繰りに影響を及ぼします。
その保険もできる限りは節約すべきです。
まとめ
借入金利息についてまとめました。
借入金利息は、まず変動金利と固定金利で利率が変わり、返済方法でも変わることを確認しました。
これらの選択はメリットとデメリットを理解しつつ、会社の業績や資金繰り、将来予測などを考慮して決めることになります。
そして、返済期間途中で実質金利がいくらなのかの確認は忘れずに行ってください。
思ってもみなかった無駄遣いが発見できるかもしれません。