みんな大好きな節税。
この節税にも当然に費用対効果という面があることを意識しなければなりません。
今回まとめようと思うのは、この費用面について。
お金が出ていくということもありますが、無理な節税はそのときの辻褄合わせで物事を組み立てることが多いので、後々面倒な事や、負の遺産を作る可能性もあるということです。
目先で起こるデメリットと、後々顕在化するデメリットでしょうか。
目先で起こることは、ある程度想定しているので準備もできます。
しかし、数年、数十年先のことは誰も分かりませんし、責任も負いません。自己責任の世界になってきます。
節税について興味のある方は、その節税スキームを実行する前に俯瞰して、どうなるかということを意識してみてください。もしかすると、目先の節税よりも優先すべきものが見えてくるかもしれません。
節税の効果とデメリット
節税といっても、単純に法律上認められている制度を利用するものから、経済合理性のある取引実態や事実を作り上げて所得分散を図るもの、また、それを利用して財産の評価方法を有利にしたりと、様々です。
節税の効果
正直なところ、あまり実感されないような気がします笑
節税しなかったときの税金がいくらだったのかイメージできないことが大きな理由なんでしょうね。
もし節税しなかったら、これぐらいの税金だったんですよと説明しても、あれだけ手間とお金をかけて節税しても「あれ、結局これぐらいは税金かかるんや…」という感じになることが多いです。
例えば、節税実行前にシミュレーションを行うことが多いですが、その前提となる利益が上振れした場合、節税効果は減殺されます。
結果的にそれは空振りなんです。
その時、経営者に残るのは、節税の効果による喜びより、不満です。
頭では利益が増えたためと理解していても「結局やらんでも良かったやん」と、もやもやとした感情が渦巻きます。
基本的に効果がないことは誰も提案しないので、提案を受けた節税スキームは前提条件がおかしくならない限り、効果はあるはずなんです。
ただし、その効果を実感できるかは別の話なので、節税スキームを提案する際は、効果を理解していただくよう説明するべきなんだろうなと思います。
デメリット
わたしは節税のデメリットは、手間とかお金がかかるというコストの意味ではなく、代償という意味合いが強いのかなと思っています。
わたしの経験も含めて、これは明らかに節税のデメリットだなと感じた事例を紹介します。
やりすぎた節税をした代償
一つは、事業会社の不採算部門を別会社へ移したときの事例。
もう一つは、気の毒な養子縁組の事例です。
現場の混乱
グループ会社では、不採算部門をどうにか利用したくなるのでしょうか。
人間って、損をしたくないくせに、節税のためなら損を受け入れるんです(わたしにはできませんが…)笑
グループ会社の不採算部門と何らかの形で業務委託契約を交わして、経済合理性のある取引実態を作り上げて、経費処理していたけど、それでは足りないので、事業譲渡で吸収してしまいました。
そこまではまだ良いのですが、短期間で別会社に二回目の事業譲渡をしたときに、人の問題や経理処理で混乱が起きたという事例です。
大企業では慣れっこかもしれませんが、中小企業ではあまりないことが立て続けに2回起きたので、会社への不信感から、結構な退職者を出し、大きく業績が傾いたようです。
現場のことを考えない経営者が起こした、節税の代償といえるでしょう。
戸籍の汚れ
税理士業界では有名な関根稔先生の、「税理士のための百箇条」の一つに倫理の基準というものがあります。
子や配偶者を祖父母の養子にして、相続税の節税を図るというもの。
この場合、先生は、節税の提案をする税理士自らがこれをおこなっていれば、納税者にアドバイスしても良いが、そうでない場合は、倫理観を持った対応をすべきだとしています。
ほんとうにそう思います。。。
子供を祖父母の養子にすれば、節税の効果は確かに得られますが、その子供が大きくなった時、戸籍の汚れ(父親と兄弟になっていること)を税理士は弁明できますか?ということです。
代償は当事者が受けるのではなく、大きくなった子供が受けるんです。
状況は異なりますが、勤務していた時、お客様の強い希望で司法書士の先生と養子縁組のお手伝いをしたことがあります。
しかし、縁組後の関係がなかなかうまくいかず、疎遠になり、その結果「こちらの家には寄り付かない、財産だけが目当てや」との不満が募り、養子縁組は解消されることとなりました。
当事者間の問題ではありましたが、養子の方は、頼まれて引き受けた結果、そのような扱いを受けたので、ほんとうに気の毒で、申し訳ないことをしたなと思います。
まとめ
映画などではハッピーエンドでお終いですが、現実はその続きにはストーリーがあります。
そして、その後のストーリーは不幸なことが起こるものです。
この世界にいると色々経験します。
だからといって節税の提案をしないのでは、我々の存在価値はありません。
これからは節税の提案はしても、どんなことが起こり得るのか十分な説明と、人としての倫理観は意識しなければなりませんね。