会社の税金

役員退職金を使った節税…【それって退職の事実あり!?】

2020年1月17日

勤務していたときにも結構ご相談を受けることが多い、役員退職金。

ご相談の多くは、役員退職金がどこまで出して良いのか、そして税金はどうなるのか。
みなさんそこばっかり気になるみたいです。

でも、ほんとうに大事なのは、金額ではなく、そもそもそれって退職してる?ってとこです。
指摘する税務署は、金額が高いことを立証するよりも、なんか怪しいと思えば、退職の事実がなかったことを立証する方が簡単です。
そして、退職の事実をひっくり返せれば、役員退職金自体を否認できるので税金もぎょうさん取れますよね。

詳しい役員退職金の相場については、また別の記事に譲りますが、会社で役員退職給与規程が整備されており、同業類似法人と同じような基準で支給された役員退職金が否認されることは少ないと思います。

同業類似法人の基準がわからんという問題もありますが、退職する直前の役員報酬を基準(役員退職金の支給直前に不自然な増額などする場合はNG)として実務的に使われている計算方法で支給されていればOKだと思っています。

いくつか計算方法はありますが、一般的には下記のように計算します。
ただし、この計算方法はあくまで役員退職金の適正額を計算するものです。

 

退職直前の役員報酬×勤続年数×功績倍率=役員退職金

 

金額のことはこれぐらいにしておいて、我々が気にするのはそこではなく、本当に退職するのかどうか。

ほとんどの方が「退職するよ。登記もするし、問題ないでしょ。」ぐらいの感じです。しかし、税務署は金額のことよりも、まずは退職の事実を確認すると思っておいた方が良いのかもしれません。

事実認定の世界です。

退職の事実について確認していきたいと思います。

 

一般的にイメージする退職と税務上の退職

退職について、2つの見方(立場や考え)があり、それが知らず知らずのうちに退職の事実を薄れさせる結果となったというケースが多いんです。

 

一般的にイメージする退職

一般的にイメージする退職って、辞任や解任、死亡など退職の事実があって、その退職日を境に、職務に従事することがないため、出勤もしませんし、勿論、給与も支給されません。
また、当たり前に、決裁など何らの権限も有しなくなって、会社との関わりがなくなるという感じでしょうか。

中小企業の多くは、株主=経営者となっていますから、退職をするからといって株主の立場まで退かないといけないのかと思っている方がいらっしゃいますが、それはまた別の話で、退職によって株主ではなくなるということはありません。

言い換えると、経営者の権限はなくなるが、株主としての権限は引き続き持っているということになります。

 

税務上の退職

一般的にイメージする退職に加え、実質的な退職があったと考える、分掌(ぶんしょう)変更も退職と考えられます。

代表取締役としての地位を退任し、非常勤取締役となり、地位や給与などが激変した場合に限り退職の事実が認められるというもの。
例えば代表取締役が、会長や相談役など名誉職のような地位につき、数百万円だった役員報酬が数万円程度になり、一年に一回ぐらいしか会社に顔を出さず、仕事もほとんどしていない場合なんか正しくそうです。

国税庁のHPでも分掌変更の判断について例示されていますが、これはあくまで形式上のものであって、実質的にどうなっているかが重要なのに、誤っている場合が多く、争訟が多発しています。

分掌変更の例示

 

退職の事実が否認されるケース

中小企業経営者の多くは、退職後も株主としての地位は確保したがります笑
おそらく、退職してもなお、会社に関わっていたいという気持ちの表れでしょう。

でも、それって、めちゃくちゃ危険です。
おそらく株主としての権限と経営者の権限がごっちゃになって、結果的に経営をしてしまっているパターンが多いです。

その場合、勿論、退職の事実が認められませんので、役員退職金ではなく、役員賞与という扱いになります。
具体的には、役員退職金は賞与扱いになるので、全額が経費にならず、低い課税(退職金は性格上、税額計算が優遇されています)ではなく賞与として課税、源泉徴収されます。

ちなみに役員退職金が高額過ぎると否認された場合は、まだ良い方で、退職の事実を否認された訳ではないので、退職金は退職金として扱われます。
具体的には、適正額までは退職金、超えた部分は賞与となるため、賞与部分の経費だけが認めらず、源泉徴収されます。

なので、退職の事実を否認されることが、一番怖いんですが、納税者の方はあまり気にしていないんですよね笑

退職をしても、これをやっていると退職の事実を否認される可能性のあるケースを確認したいと思います。

 

経理、財務、人事の仕事をしている、または権限を有している

退職してもなお、会計入力をしている、給与計算をしている、人事の決裁権を有している、振込業務や通帳を管理していて、金融機関への融資相談をおこなっている等々の事実が認められれば、ほぼアウトでしょう。

退職しているので、会社の経営に直接影響するような仕事はできないと考えてください。

 

役員会議や営業会議などに出席している

これもそうですよね。

退職しているので、会社の経営に直接影響するこれからの方針を決めるような会議に出席してはいけません。

 

異様に長い引継ぎ期間を設けている

判例でも否認されていますが、2~3年など引継ぎ期間を設けるのも問題です。

そもそも論として、なぜ引継ぎをしてからの退職をしなかったんだと指摘を受けます。
それなりの理由があって退職後に引継ぎをする場合は、理由の説明と引継ぎ期間は極力短期間でおこなうべきでしょう。

 

引き続き主要な取引先への対応をしている

税務署が取引先に反面調査をおこなえば一発ですね。

 

取引先A社の代表者って△△さんですよね?
え?違いますよ。
昔から○○さんですけど、変わったんですか?

 

取引先に確認されれば一発アウトですよね。

お気を付けください。

 

まとめ

退職の事実については、納税者の方は軽く考えている場合が多いので注意してください。

また、役員退職金の支給から一、二年過ぎた頃に税務調査がおこなわれることが多いのもポイントです。会社から離れようと退職したものの、やっぱり気になって、関わってしまうのも、ちょうどこのあたりの時期なので、経営者の心情を熟知した税務署の対応なのでしょう。

一旦、退職して復帰することが認められない訳ではありませんが、それなりの理由と退職から復帰までの期間は見ておく必要があります。
例えば、次世代にバトンタッチしたものの、経営が大きく傾き、業績が著しく悪化したため、現経営陣からの要請もあって、復帰したというのもあり得るでしょう。
しかし、この場合も業績の悪化具合や、退職から復帰までの年数についての程度加減の問題は残るので、そのあたりはきちんと説明できるようにしておく必要があります。

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