平成25年からスタートした所得拡大促進税制。
多くの会社が毎年1~2回、雇用者への給与を見直す時期を設けているかと思います。
中小企業の場合、支給した給与が去年と比較して1.5%増加していれば、その増加額の15%の税金を控除してくれます。
定期的に昇給を実施している場合、税金を安くできる可能性が高いといえます。
この制度は、今では当たり前になってきた感がありますので、ご存じの方も多いかと思いますが、平成30年4月1日以降に開始する事業年度から適用要件など改正されました。
今回は中小企業向けに解説しますので、細かな要件など確認してみてください。
制度の概要

簡単な概要です。
「継続雇用者給与等支給額」とは、継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員)に支払った給与等の総額をいいます。
「給与総額」とは、役員とその親族関係者を除く全ての国内従業員に支払った給与総額をいいます。
例えば「産休・育休の場合は?」「出向者がいる場合は?」「期中に役員になった場合は?」など詳細については中小企業庁ホームページのこちらをご確認ください。
簡単にまとめると、下記2要件を満たせば、①の増加額の15%と法人税額の20%のいずれか少ない方を税額控除できます。
ココがポイント
① 前年度の給与総額(役員と役員親族除く)を超えている
② 前年度と当年度の24ヵ月間、給与等の支給を受けた従業員の給与総額が前年比1.5%以上増加している
給与の集計前にざっくりでも①の要件がどれぐらい超えているか確認しましょう。
極端ですが、①の増加額がたったの10万円だったら、15,000円の税額控除しか期待できません。
本制度の利用は面倒では?
前年度と当年度に在籍する従業員給与を集計し、法人税や所得税の確定申告書等に明細書を添付する必要があります。
制度適用にあたり、事前認定や書類の提出の必要はありません。
使える場合は積極的に使わないと損です。
ただし、最初の申告時に明細書を添付しなければ、適用することはできませんので、注意が必要です。
教育訓練費が増加した場合、上乗せ効果も期待できる
上記要件の②が2.5%増加しており、教育訓練費が前年比10%増加した場合は、①の増加額の25%が税額控除できます。(教育訓練費の10%増加要件に代えて、経営力向上計画の認定を受けた場合も適用できます。)
教育訓練費とは?
教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させるための費用をいいます。
残念ながら、この教育訓練費も役員とその親族関係者は除外されていますので、従業員の方に対するものだけが対象となります。
教育訓練費の例
教育訓練費となるもの
外部講師を招聘して講義・指導をしてもらう費用(交通費・宿泊費など含む)
会社自ら教育訓練をおこなう場合に賃借する施設使用料等(備品やコンテンツ使用料など含む)
外部教育期間などの依頼する教育プログラムの計画・作成に係る費用
セミナー、講習会などの受講料や参加費
職務に必要となる資格・検定の受験料
教育訓練費とならないもの
遠方で外部講師を招聘して講義・指導をしてもらう際、教育訓練を受ける従業員へ支給した交通費や宿泊費
会社自ら教育訓練をおこなう場合の講師(自社役員or従業員)の人件費等
会社が所有する施設での教育訓練に係る費用(水道光熱費や施設の取得費および減価償却費を含む)
教材の購入やコンテンツ開発に係る費用
教育訓練機関に対する寄付金など
まとめ
本制度は事前の届出はなく、確定申告書等の提出時に集計結果を明細書に添付することで適用することができます。
別の言い方をすると、明細書を添付しなければ受けることはできません。
申告後、受けることを忘れていたため、更正の請求(この制度を利用して払い過ぎていた税金を返してもらうこと)をすることができません。
また、赤字事業年度、赤字の繰越がある場合、申告時点では効果はありません。
しかし、明細書を添付しておけば、後日の税務調査で売上の計上漏れなど指摘され、赤字がひっくり返された場合、修正税額を少なくできます。
(修正税額が発生した時に適用を受けたいと明細書を添付しても受付けてくれません)
適用要件を満たす場合、集計の手間はかかるかもしれませんが、万が一に備えて、保険として毎期明細書を添付するのも良いでしょう。